給食調理員 地域で食育 福岡県筑後市 親子に料理教室 好評

西日本新聞

和気あいあいとした雰囲気の中で開かれた親子料理教室=福岡県筑後市立古島小 拡大

和気あいあいとした雰囲気の中で開かれた親子料理教室=福岡県筑後市立古島小

 ■くらし天気図■

 親子を対象にした春の料理教室が3月末、福岡県筑後市内の3カ所で開かれた。講師は市職員として学校給食に携わる調理員たち。その活動の場を学校の調理場だけでなく地域へ広げる背景には、一般市民にはなかなか見えにくい学校給食のPRと、日ごろ磨いた腕で地域に貢献しようという調理員たちの思いがあった。

 ▼レベルに応じて

 会場となった古島(こじま)小学校の家庭科教室。ぷーんとショウガの香りが漂う中、約50人の親子が、にぎやかに料理をこしらえていた。

 まな板の上のコマツナを一枚一枚切る子に、一握りできるくらいの量を一度に切った方が早いことを教えたり。タマネギは包丁を少し斜めに寝かせた方がよく切れることを見せたり。調理員たちは、相手のレベルに合わせながら、基本をアドバイスしていく。

 キムチチャーハン▽ワカメスープ▽ギョーザ▽コマツナのピーナツあえ▽イチゴ入り牛乳寒天‐。ほぼ地場産の食材で、いずれも市の児童が「家で作って」と親にせがむ人気の給食メニューが、約2時間で出来上がった。

 「プロの調理員さんの技に間近で触れ、毎日の給食に対する感謝の気持ちが増した」「家でやらせようとしても、子どもが甘えたり、こちらも自分でした方が早いとついやってしまったり。こんな機会があるのがありがたい」。親子は口々に感謝の言葉を述べ、小学校をあとにした。

 ▼技術の延長線上

 筑後市で料理教室が始まったのは20年前。「今は公務ですが、当初は調理員は休んでばかりという声に対抗しようと、組合活動で始めたのがきっかけでした」。古島小に勤める田中ひろみさん(59)は振り返る。

 学校には春、夏、冬と3度の長期休みがある。調理員たちはこの間、器具類やダクトなど施設内の大がかりな清掃・整備といった日頃できないメンテナンス作業などを行うが、忙しく立ち回る調理業務と違い、陰に隠れて見えにくい。自治体によっては「実働は年間約180日」として、夏休みなどに調理員をプールの監視業務や図書館の受付に従事させるところもある。

 これに異議を唱えるのが福岡教育大学家政教育講座の秋永優子教授(調理学)。「家庭の食の乱れが深刻な社会問題となっている今、学校給食はそれを立て直す食育の場でもある。給食の調理技術や献立を活用し、子どもを通じて家庭に働きかけるような地域での食育のあり方を考えた方が、調理員と市民の双方にとって効果的です」と語る。

 ▼どんどん提案を

 募集をかけると、常に定員を上回る筑後市の料理教室。昨年は春に加えて夏にも開催した。公民館事業の一環で、小3以上の児童を対象に、夏休みに3日間で弁当を作れるようになることを目標に開く「子どもチャレンジ教室」も、昨年は約3倍の応募があった。

 市教委中央公民館の中村敏和係長は「日ごろ培った調理の技術を市民に還元する。食は全ての年代に関わるから、生涯学習の理念にも沿う」として、今年の夏休みは実施を2回に増やす提案をする。

 毎春、千人を超える参加者でにぎわうイベント「ちっごマラソン」でも食事の提供を行う調理員たち。市民ランナーの中には、調理員の作った豚汁を食べるために参加する人もいるほどだという。

 「本来の業務は学校給食だけど、それだけが私たちの仕事と限る必要はない。民間委託も進んでいますが、正規の調理員だから見えてくること、できることもたくさんある。だけん、私たち調理員の方から、子どもや市民のためになることをどんどん提案ばしていかんとでけんとですよ」。本年度で定年を迎える田中さんは、そう話している。

 ●60歳以上の男性も対象に 校外活動 年々広がる

 自治労福岡県本部の豊福るみ子さんによると、給食室外での調理員の活動は、年々広がる傾向にあるという。

 福岡県内では、小郡市で調理員たちが講師となって親子料理教室を開くほか、公民館事業の一環として毎年夏に60歳以上の男性を対象にした料理教室を実施。直方市では春、夏、冬休みの期間に学童保育へ給食を提供している。

 岡垣町では30年ほど前から、学校給食調理場が拠点となって廃油を回収。環境に優しいせっけんを作り、給食で使ったり、町内に配ったりする取り組みを展開している。今では趣旨に賛同した地域の公民館も加わり、町の事業にもなった。豊福さんは「調理員の活動が町を動かした」と胸を張る。


=2013/04/03付 西日本新聞朝刊=

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