「市民後見」推進の動き 増える身寄りのない高齢者 地域の介護力に期待

西日本新聞

女性(手前)の誕生月を祝い、花を贈る森本敦さん(左)と中山和恵さん(右) 拡大

女性(手前)の誕生月を祝い、花を贈る森本敦さん(左)と中山和恵さん(右)

 判断能力が不十分な人に代わって後見人が財産を管理したり、介護サービスの契約を結んだりする成年後見人制度で、親族でも弁護士でもない一般市民が後見人を担う「市民後見」が注目されている。核家族化や家族関係の希薄化で身寄りのない高齢者が増える中、お年寄りと同じ目線で寄り添う市民後見人の活動を取材した。

 6月末の土曜日、福岡県福津市の有料老人ホーム。「誕生月なのでお花をお持ちしました」。市民後見人の森本敦さん(61)が優しく語りかけると、車いすの女性(86)に笑顔の花が咲いた。森本さんと市民後見人のペアを組む中山和恵さん(40)も「誕生カードを作ってきたよー」。困ったことはないか、体調はどうか…。雑談を交えた1時間ほどの聞き取りでは和やかな時間が流れた。

 身寄りがないこの女性は2年ほど前に認知症となり、施設で1人暮らし。物忘れが激しく、金銭感覚がなくなったことなどから、市社会福祉協議会(社協)は、規定の研修を受けて市民後見人として登録している森本さんと中山さんを、担当者として指名した。2人は昨年7月から月3回ほど女性を訪問し、日常の金銭支払いや悩み相談に乗っている。

 「何に困り、何をしたいのか。話しやすい雰囲気をつくって話を聞き出すよう努めている」。森本さんは損害保険会社に勤務していたころ培った、人の話を聞くノウハウが生きていると話す。主婦の中山さんは「最初は聞き取った悩みを誰に伝えればよいのか分からなかったけど、施設の人たちとも連携が取れるようになった」と手応えを語った。

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 認知症や1人暮らしの高齢者の増加に伴い、成年後見制度の必要性が高まっている。最高裁によると、制度がスタートした2000年度の成年後見の申し立て件数は9007件だったが、14年(1~12月)には3万4373件と約4倍に増えている。

 制度利用が増える一方、後見人の担い手は大きく変化してきた。00年度の後見人は、配偶者や子ども、兄弟姉妹など親族が全体の約99%を占めていたが、14年では親族は約35%にとどまり、弁護士など親族以外の第三者が約65%となった。身寄りがないお年寄りが増えたり、相続をにらんだ親族間のトラブルが増えたりしているのが主な理由だ。

 後見制度の利用が増える中、弁護士や司法書士ら専門職だけが担うには限界もある。そこで国は12年の改正老人福祉法で「市民後見人の人材育成と活用は市町村の努力義務」と規定。13年度末時点で全国の128市区町が、養成研修を実施するなど市民後見を推進する動きが広がりつつある。九州では福津市をはじめ福岡市や宮崎市、熊本県水俣市など21市町で取り組んでいる。

 14年に全国で福津市のように社協が家裁から後見人を受任し、登録した市民が実務を担う形式の市民後見人は697人、家裁から直接受任した市民後見人は213人と、合わせて全体の2・6%にすぎないが、同市社協の浅井あかね総務課長は「市民後見人はお年寄りに近い目線で寄り添うことができる」と強調する。国が介護を施設から在宅へ政策転換する中、「専門的知識と経験を持った市民後見人が増えれば、認知症のお年寄りを地域で支える力になる」と話す。

 ●福津市の市民後見

 昨年7月にスタート。認知症などの高齢者の後見人を、家庭裁判所から法人として受任した福津市社会福祉協議会(社協)が、実務担当者として市民後見人を指名する。社協の監督の下、預貯金から現金を引き出して生活費を支払ったり、日常を見守ったりする。活動には時給1000円が支払われる。現在、6カ月の研修を修了した26人が登録。2人一組で6人の市民後見人がお年寄り4人の日常を支えている。


=2015/07/18付 西日本新聞朝刊=

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