心晴れる 粋な善意 鹿児島市電、「万年さつまおごじょ」さんに感謝

西日本新聞

鹿児島市電の車内に掲示されている「万年さつまおごじょ」さんへの感謝を伝える文書 拡大

鹿児島市電の車内に掲示されている「万年さつまおごじょ」さんへの感謝を伝える文書

 鹿児島市街地を走る市営路面電車の車内に、変わった文書が掲げてある。「万年さつまおごじょ様へ」と題し、「梅雨時を前にあなた様のご厚意に深く感謝申し上げます」と記してある。何らかの行為へのお礼だろうが、どんな出来事があったのか。万年さつまおごじょなる人は一体、どんな人物なのか。

 市電車事業課によると、4月25日、鹿児島駅前電停に到着した運転士が運転席にA4判の茶封筒が置いてあるのに気付いた。持ち帰り、課の職員数人で中身を確認すると、現金25万円と1枚の便箋が入っていた。便箋には丁寧な筆致でこうあった。

 「久しぶりに電車に乗った時に『かえるの傘』がないことに気づきました。勤めから戻りました時お世話になった『かえるの傘』はやっぱり必要と思います。買える分買ってくださると幸せです」。末尾に「万年さつまおごじょ」と署名も添えられていた。

 かえるの傘とは、傘を持たない乗客が自由に使えるよう車内に置いた傘。忘れ物の傘を有効活用しようと市電で始めた試みだ。廃止した時期もあったが、2000年から復活している。冨永倍央(ますお)課長は「万年さつまおごじょさんは通勤で利用していた時期に、かえるの傘を使ったのだろう。久しぶりに乗車したら、たまたま置いていなかったため、寄付を思い立ったのではないか」と推測する。

 だが、どのように茶封筒を置いたのか。「ほかの乗客の目もあるだろうに」と冨永課長は首をひねる。車両には前後に一つずつ運転席があり、運転士は進行方向側の席を使用する。乗客全員が降りる終点で、運転士が席を入れ替わる直前に置いたのかもしれない。

 感謝の文書は5月中旬から掲示されている。「職員全員が市電とその乗客に向けられた優しい心遣いに感動している。いつかまた乗車するであろう万年さつまおごじょさんにこの気持ちを伝えたかった」と冨永課長。車内広告に交じって掲げられた文書はインターネットやツイッターなどで紹介され、静かな話題を呼んでいる。

 現金25万円は鹿児島中央署に拾得物として届けられている。保管期間の3カ月が過ぎたら市が譲り受け傘を購入し、万年さつまおごじょさんの思いに応えるという。

=2015/07/25付 西日本新聞朝刊=

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