博多ロック編<254>「SRAM」の試み

西日本新聞

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ライブ中の「SRAM」のメンバー

 福岡市のアイドルユニット「SRAM(スラム)」が結成されたのは一昨年のことだ。「SRAM」の英文字を一つ一つ解読すればこのユニットの性格、志向が解読できる。

 「S」=「サンハウス」「シーナ&ロケッツ」。「R」=「ロッカーズ」「ルースターズ」。「A」=「ARB」「アンジー」。「M」=「モッズ」「モダンドールズ」。

 このように博多ロックの代表的なバンドの頭文字を組み合わせたものだ。メンバーは地元のアイドルグループ「LinQ(リンク)」(27人)の中から選抜された13歳から24歳までの4人組だ。

 このユニットを立ち上げたのはプロデューサーの木村誠一である。木村はバンドやディスコのDJの経験があり、80年代の博多ロックの熱気を知る1人だ。

 「博多ロックへの敬意と継承を考えて企画しました」

 すでにサンハウスの「レモンティー」、モダンドールズの「チェリーに首ったけ」、シーナ&ロケッツの「ユー・メイ・ドリーム」など博多ロックの名曲をカバーしたシングル盤を3枚(全6曲)、リリースしている。また、ライブでも活動をしている。

 シングル盤の録音、ライブでは実際に80年代に活動したロック・ミュージシャンたちがサポートしている。曲はアイドル向けにアレンジされてはいない。原曲通りだ。サウンド自体はしっかりとした博多ロックだ。

 ×   ×

 リードボーカルで最年少のミュウ(13)は言う。

 「みなさんの演奏を聴いていて、すごいと思います。おかげで最近は耳が肥えてきました」

 ミュウは山部善次郎の世代にとっては孫に近い年齢だ。山善の歌もカバーしている。ミュウは山善を「善々(ぜんぜん)」と呼ぶ。年齢が離れ過ぎていて博多ロックにある縦社会とは無縁だ。

 博多ロックの黄金時代に身を置いた世代にとってアイドルが歌うことに違和感を抱く人もいるだろう。ロッカーたちはどうだろうか。「シーナ&ロケッツ」の鮎川誠は言う。

 「若い人が私たちの曲を歌ってくれているのはありがたい」

 ブランド化した博多ロックにアイドルの組み合わせ。もちろん、そこには商業性も加味されていることはいうまでもない。ただ、時代によって音楽は変わっていくことも確かだ。「SRAM」にとって博多ロックは郷愁ではなく、新しい出会い、発見である。博多ロックを伝承しながら新しい音楽を創(つく)り出す一つの試みともいえる。

 =敬称略

 (田代俊一郎)


=2015/07/27付 西日本新聞夕刊=

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