【生きる 働く 第7部】ブラックバイト 学生は今<2>ノルマや責任 社員並み

西日本新聞

コンビニの学生バイトは、レジ以外にもさまざまな業務を任されている 拡大

コンビニの学生バイトは、レジ以外にもさまざまな業務を任されている

 大学近くのコンビニは夏場、ソフトドリンクがよく売れる。その発注業務は、アルバイトの大学生一樹さん(21)=仮名、北九州市=に任されている。

 新商品が毎週4~6種類入ることを念頭に、昨年の販売実績も見ながら、欠品や余分な在庫が出ないよう入荷数を決める。働き始めて2~3カ月で責任者となった。発注作業は通常業務の後でタダ働き。初めのころは1時間ほどかかった。休日でも発注やミーティングに出向くが給料は出ない。「おかしいとは思うけど、オーナーは『うちのルールだから』と譲らなくて」

 ルールは他にもある。「季節商品」の販売ノルマで、「売れないなら辞めて」と迫られる。12月はクリスマスケーキ(約2千円)3個、1月はおせち(約1万5千円)1個、2月は恵方巻き3本。おせちを買って1人で食べた先輩もいた。何人ものバイトが入れ替わった。残った一樹さんには新人教育の仕事も加わった。

 「僕は買いません」。我慢が限界に達した一樹さんはついに拒否した。それ以来、自分だけは何も言われなくなった。それでも「オーナーも本部からのプレッシャーなんかで大変なんだろうな」と、先月はまた、父の日にビールセットを買って実家へ送った。

 低賃金のバイトにも社員並みの責任を求める状況は、昨年の「学生アルバイト全国調査」でも明らかになった。金銭や鍵の管理、クレーム対応など何らかの責任や役職を担う学生は3割近くいた。調査したブラック企業対策プロジェクト(東京)は「バブル経済の崩壊後、企業で人件費削減が進み、非正規労働者への依存度が高まった」とみている。

 「バイトなしでは経営が成り立たない」。福岡市で大手コンビニのフランチャイズ店を営む康之さん(47)=仮名=もそう漏らす。妻以外の従業員は全てバイトとパートだ。

 午前1~5時は客がピーク時の10分の1に減る。深夜営業をやめた方が利益率は上がる。でも、ブランドイメージにこだわる本部の意向を考えると「24時間365日営業」の看板は下ろせない。「独自の値引き販売も難しく、利益を出すには人件費を削り、売り上げを伸ばすしかない。中にはバイトにノルマを押しつけるオーナーもいるだろう」

 一方で業務は増えていく。宅配便の受け付け、公共料金振り込み、配食サービス、さらにカフェの試みも。「以前はバイトも3カ月あれば仕事を覚えられていたが、今は半年かかる」。学生たちが不満を抱えながらもバイト先を変えないのは、仕事を一から覚える負担が大きいという側面もあるという。

 「お客さまのため」を掲げて労働者に我慢を強いる構図は、他の業界でも見られる。

 全国に約2千店舗を展開する牛丼チェーン「すき家」では昨年、深夜の1人勤務体制「ワンオペ」に象徴される過重労働でバイトが次々に辞め、休業店舗が相次いだ。

 問題を調査した第三者委員会の報告書によると、同年3月に「過労死ライン」(月80時間以上)を超える100時間以上の残業をした従業員は、非管理職社員が約55%の231人、バイトも1・8%の579人に上った。労働基準監督署が昨年度までの3年間で64回も是正勧告したが、改善していなかった。

 運営会社のゼンショーホールディングス(東京)は、消費者に「おいしい食を手ごろな価格で」「いつでもどこでも」提供することを理念としてきた。同委員会は「顧客のためになるという強い信念」の下で、慢性的な人員不足でも新規店を増やし続け「従業員の人としての生活を尊重する観点が欠けていた」と指摘した。

 企業経営に詳しい白鴎大の樋口兼次名誉教授(61)は、「便利で安い背景には、低賃金で長時間働く労働者に依存した効率性の追求がある。消費者の利便性と、労働者の休息や生活権との折り合いをどうつけるか。そろそろ『便利さ』から生活の『豊かさ』にかじを切ったらどうでしょう」と語った。


=2015/07/29付 西日本新聞朝刊=

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