<20>西新に復活、ミラクルな味 未羅来留亭(福岡市早良区)

西日本新聞

「今でも7割が昔からのお客さんです」と語る浦田誠二さん 拡大

「今でも7割が昔からのお客さんです」と語る浦田誠二さん

福岡市早良区西新4の7の17の103。ラーメン480円。替え玉100円。ギョーザ340円。営業時間は午前11時~午後8時半。水曜日定休。092(834)8843。

 リヤカー部隊で知られる西新商店街(福岡市早良区)の一角に未羅来留(ミラクル)亭はある。西新で産声を上げ、長年親しまれてきたが、移転や休業の曲折も経験した。この地に復活したのは1年半前。店内でおいしそうに麺をすすっていた自営業、矢野雅也さん(36)は「戻ってきてくれてうれしい」。そんなファンに支えられている老舗である。

 創業者の浦田誠二さん(64)に聞くと、ラーメンとの出合いは25歳のころ。大学を辞め、将来に迷っていた時、親戚に頼まれて福岡市にあった札幌みそラーメンの専門店で働き始めた。「最初は嫌々。でもやってみると嫌いじゃなかった」。4年ほど働くと独立を考えるまでになっていた。その際「当時のみそラーメンブームが下火だったから」と宗旨変えを決意。市内の豚骨ラーメン店で作り方を習って、前身となる「友心亭」を同市博多区にオープンさせた。

 昆布や玉ネギで取った元ダレ。豚の頭蓋骨とゲンコツ(大腿(だいたい)骨)でコクを出す。あっさりさせるために鶏がらを加える。豚と鶏の比率は9対1。友心亭では試行錯誤を繰り返し、今の味の原型を作り上げた。そして1982年、自身の地元である西新に店を構える。店名は「ほかにはないミラクルな(驚くべき)味の店」の意味を込めた。暴走族風の当て字のようでもあるが「そんな過去はありませんよ」と笑う。

 昭和の頃の西新商店街は今以上ににぎやかだった。「とにかく人が多い。すぐに繁盛しました」と振り返る。開店4年後には商店街が大火に見舞われたが、再建を果たし、西新になくてはならない店となった。

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 2012年11月のことだ。西新の店を閉め、福岡市中央区平尾に移転する旨の張り紙を店に掲げた。「60歳を過ぎて体も疲れていたし、マンネリ化した部分もあったのかもしれません」と浦田さん。厨房(ちゅうぼう)には引き続き立ったものの、経営権を知人に譲るなど営業形態を大きく変えた。想定通りにはいかず、数カ月で閉店に追い込まれてしまった。

 休業中、西新の街を歩くと昔の常連客から「そろそろやらんですか」と声を掛けられた。そんな後押しもあり「このままでは終わりたくない」と気持ちが固まる。ずんどうや釜を買い直し、13年12月に今の場所で営業を始めた。かつての店舗から数十メートル離れた場所での再スタートだった。

 復活した一杯は、かつてのような茶褐色のスープ。濃厚なタイプではないが、軽やかな豚骨ダシをしっかりと感じられる味だ。「骨をあまり炊き込まない。煮出した骨は取り除く」のがその決め手だという。

 「場所が変わると水が違う。だから味も変わる」とも言う。確かに最初の西新、移転先の平尾で食べた味とどこかが違う。ただ、フレッシュな豚骨ダシのおいしさ。ほかにはない“ミラクル”な味はしっかり残っていた。

(小川祥平)

=2015/08/06付 西日本新聞朝刊=

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