<47>地球を支配する異星人【幼年期の終わり】

西日本新聞

 「大学読書人大賞」という賞をご存じでしょうか。これは、全国の大学文芸サークル所属メンバーによる投票と評論(推薦文)と議論(ビブリオバトル的なプレゼン大会)で、大学生にいちばん読んでほしい本を大学生が選ぶ賞。前年に出た新刊だけでなく、新訳の本や初めて文庫化された本も候補になるのが特徴。2008年から毎年開催され、今年で8回目ですが、その記念すべき第1回受賞作が、光文社古典新訳文庫から池田真紀子訳で07年に出たアーサー・C・クラークの名作『幼年期の終わり』。

 SFオールタイムベストの定番ですが、ハヤカワ文庫SFの福島正実訳『幼年期の終り』は1964年、創元SF文庫の沼沢洽治訳『地球幼年期の終わり』は69年の初刊。ともに40年前後が経過し、新訳の潮時だったかもしれない。

 原書刊行は1953年。新たな序文を付し、冒頭部分(第1章)を書き直した改訂版が90年に出ており、この新訳版はそれを初めて邦訳したもの。

 時は(この改訂版では)21世紀初頭。巨大な宇宙船の群れが地球上の大都市上空に飛来。オーヴァーロード(最高君主)と呼ばれる彼ら異星種族を代表して、地球総督カレランが、電波の全チャンネルを使って全人類へのメッセージを伝え、地球をゆるやかな支配下に置く。各国政府の自治は認めるものの、戦争や人種差別は許さない。カレランの統治のもと、世界平和が実現する。

 第1部の主人公は、地球人でただひとり、スポークスマンとしてカレランとの対話を認められた国連事務総長ストルムグレン。

 その50年後を描く第2部では、カレランがついに人類の前に姿を現す。

 最後の第3部では、衝撃の真実が明かされ、“幼年期の終わり”が意味する驚愕(きょうがく)のビジョンが提示される。そのインパクトが今も薄れていないことは、大学読書人大賞受賞が証明している。むかし読んだけど、どんな話だっけ? という人は、この新訳版でぜひ再読を。なお、本書は、米ケーブル局のSyfyがTVミニシリーズとしてドラマ化し、今年12月に放送予定。

(書評家、翻訳家)

=2015/08/11付 西日本新聞朝刊=

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