NIE全国大会より<上>学力トップ 秋田の教育は 子どもの発問力 育成 探求型の学び 家庭学習に

西日本新聞

 新聞を授業に活用する「NIE」(教育に新聞を)の全国大会が7月30、31の両日、秋田市であった。20回目となる本年度の大会テーマは「子どもたちの学びの原点でもある『発問力』をどう育てるか」。全国学力調査で7年連続トップクラスの秋田県では、NIEにどう取り組んでいるのか。学力向上とNIEはどう絡んでいるのかなどを含め、全国の教育関係者から熱視線が注がれた。2回(次回は18日掲載予定)にわたって報告する。

 「秋田県の全国学力調査結果では、とりわけ国語のB問題(応用問題)での正答率が全国平均を大きく上回っている。この背景にはNIEの取り組みがあるのではないか」

 初日のシンポジウム。日本NIE学会長の小原友行・広島大大学院教授の問題提起は、参加者の多くの疑問を代弁していた。

 秋田県の小学校教諭、県教育委員会指導主事、大学教授が、それぞれの取り組みや見方を報告する中でこんな発言が印象深かった。

 「他県に比べ、いい意味で小学校と中学校の授業スタイルが違わない」(阿部昇・秋田大教授)

 多くの小学校では、児童の興味関心を高めるため、少人数学習、子ども同士の学び合い(教え合い)、新聞の教材活用にも積極的。だが、中学校に入ると、高校入試に向け、教科書中心の駆け足授業にシフトチェンジし、新聞活用も減少する傾向にある。

 ところが秋田県の場合、その「落差」が少なく、そのつながり(連続性)が高学力につながっているのではないか、との指摘だった。小中学校の教員交流、授業研究も活発だという。

 「秋田県の学力トップ、なぜ?」については、さまざまな考察がある。

 その一つとして挙げられるのが「家庭学習ノート」。通常は先生が宿題を出し、児童生徒がその答案を提出する。秋田県では、その宿題の課題設定そのものを子どもに任せる。そのノートに、記事が貼り付けられ、感想や意見がつづられていたりするそうだ。

 子どもたちがワクワクする授業づくりの鍵を握るのは、一般的には「教師の発問力」とされる。平易な言葉で、深い問い掛けをすれば、子どもたちの学びは活発化する。だが、秋田県が教育施策の重点課題としているのは「自ら問いを発する子どもづくり」。おやっ? なぜ? 子ども自身の発問力育成なのだ。

 児童生徒自らの学習意欲を尊重、評価する「家庭学習ノート」も、教育委員会主導ではなく、現場教員の発想から普及した。「自ら学び行動する」「答えを学ぶのではなく、学び方を学ぶ」という、探求型の学びを定着させ、高学力につながっているという。

 「秋田県では塾通いの子どもは全国最低の約2割。学校でも、家庭でも、当たり前のことを当たり前にやっているだけ」。地元教員からは、判で押したような言葉が返ってくる。

 秋田県の学力とNIEの教育効果の相関は分からない。必ずしも秋田県が突出したNIE先進県でもなさそうだった。

 記者の発問から生まれた記事から、子どもたちの新たな発問へ。そのためには、どんな取り組みが求められているのか。「答えはAかBではなく、実はCかもしれない。子どもたちを悩ませ、先生も一緒に悩む問い掛けではないか」。NIEの実践を長く続ける東京都の小学校校長(59)はそう話した。

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 ▼NIE

 Newspaper in Education(教育に新聞を)の略。授業に新聞の記事や写真などを使って、理解を深めようとする運動。1930年代に米国で始まり、日本では85年の新聞大会で提唱され、広がった。2011年度から小学校を皮切りに導入された新学習指導要領には、新聞の積極活用が盛り込まれた。


=2015/08/11付 西日本新聞朝刊=

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