介護ロボ 司会も介助も 普及進める北九州市 使い勝手に課題

西日本新聞

コミュニケーションロボット「パルロ」を抱くお年寄り=7月、北九州市のデイサービスセンター 拡大

コミュニケーションロボット「パルロ」を抱くお年寄り=7月、北九州市のデイサービスセンター

安川電機が開発する「移乗アシスト装置」。高齢者をシートで包みベッドから車椅子に移す

 人材不足が深刻化する介護現場で、介護ロボットが注目を浴びている。高齢者と会話するコミュニケーションロボット、介助者の体の負担を減らす支援装置など、多様な介護ロボットの開発が進む。全国に先駆けて、介護ロボットの開発、普及を推進する北九州市でその可能性を取材した。

 歌って踊り、落語も披露する。体長40センチ、体重1・6キロのコミュニケーションロボット「パルロ」に高齢者が笑顔を見せる。普段はレクリエーションを嫌がる認知症の80代女性もパルロを囲む輪に加わった。

 北九州市八幡東区の社会福祉法人「年長者の里」は7月、「デイサービスセンター白銀」(小倉北区)の目玉としてパルロを購入した。パルロは2012年6月、システム開発の「富士ソフト」(横浜市)が高齢者福祉施設向けに約72万円(税込み)で発売。人の顔を認識して話し掛け、100人以上の顔と名前を覚える。インターネットにつなげば多彩な話題を提供し、デイサービスのレクリエーションの司会もできる。

 全国の高齢者施設に約250台、九州でも福岡、大分などで8台が導入済み。北九州市の補助金20万円を活用して導入した同法人の中西雄一統括マネジャー(40)は「利用者の満足度向上につながり、職員の手助けにもなる」と期待する。

 介護ロボットとは、情報を感知するセンサーがあり、人工知能で判断し、動力を使って動くロボット技術を応用して、要介護者の自立を助けたり、介助者の負担を軽減したりする機器。

 北九州市は今年1月、市民や介護施設などが介護・生活支援ロボット4種類を購入する際に補助金(上限20万円)を出す事業を開始。小倉北区の「福祉用具プラザ北九州」ではロボット12種類を展示、専門職の試用には無料貸し出しする。

 6月にはロボット導入による介護現場の効率化などを盛り込んだ「スマートシティ創造特区」を内閣府に申請。市新産業振興課の渡辺泰三係長(38)は「政令市で最も高齢化率が高く、介護の効率化は急務。地場企業振興と合わせ、介護ロボット普及に取り組む意義は大きい」と説明した。

 ただ、介護現場には壁もある。

 「抱え上げない介護」をうたい、要介護者をベッドと車椅子間を移乗させる安川電機(同市)の「移乗アシスト装置」。一般的に2人でやる移乗介助を1人ででき、介助者の腰などへの負担も少ないのが特徴だ。16年に50万円程度での商品化を目指し、開発が進む。

 昨秋、市内の特別養護老人ホームなど11施設で実証実験を実施。参加した特養「大蔵園」(八幡東区)は、ほぼ寝たきりの要介護5の90代女性に1日6回使った。職員2人が人力で抱え上げると1~2分だが、装置を使うと9~25分もかかった。重量が100キロあり「動かすのが大変」「使いづらい」との声も大きかった。「介護は人の手でやるもの」という意識も根強く、今は廊下に置いたまま使われていないという。

 岩元康浩副施設長(42)は「現場で使うには大きな改善が必要。ただ、腰への負担は7割ほど軽減され、期待も大きい」。安川電機ロボティクスヒューマンアシスト事業推進室の山中太チームリーダは「人の代わりでなく、人をアシストする機器を目指す。介護現場に受け入れられるよう、安全性が高く、使いやすいものにしたい」と意気込む。

 介護ロボットには国も補助金を出すなど開発と普及を後押しする。介護ロボットが珍しくなくなる日も近いのかもしれない。


=2015/08/13付 西日本新聞朝刊=

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