NIE全国大会より<下>学力トップ 秋田の教育は 情報の活用法と読み解き 「21世紀型学力」に力点

西日本新聞

秋田県八郎潟町の中学2年生は、東北六魂祭の記事と写真を使い、班ごとに号外を作り、発表した 拡大

秋田県八郎潟町の中学2年生は、東北六魂祭の記事と写真を使い、班ごとに号外を作り、発表した

 秋田市で先月末開催されたNIE(教育に新聞を)の全国大会では、多彩な授業実践が発表された。

 秋田県大館市の中学校教諭(41)は、直木賞を受賞した作家、西加奈子さんの横顔を紹介する人欄を教材に、授業に取り組んだという。

 3年生のクラスを2グループに分け、A紙とB紙の人欄を別個に宿題プリントとして配布。後日、それぞれどんな人物像として受け止めたかを発表した。2紙では、使われた表情写真も、言葉や経歴も、文脈の組み立ても違っていた。

 生徒たちがイメージした人物像は、両グループでかなり開きがあり、「似て非なるもの」。生徒ばかりではなく、教諭にとっても驚きだったという。

 テーマや対象は同じながらも、複数記事を比較検討する「比較読み」とされるNIEの授業手法。教諭は、社説などを使っても同様の授業に取り組んでおり、「伝えられる情報をうのみにするのではなく、事実と解釈の違いを含め、情報を吟味する視点を持ってもらいたい」と話す。

 記事情報の背後にある筆者の意図、書かれていない部分にまで目を向けようとする試みだった。

 大会では、二つの視点から、NIEの有用性があらためて確認された。

 その一つは、2000年代からクローズアップされつつある「21世紀型学力」の獲得に向けて。旧来型の知識の積み上げではなく、コンピテンス(実生活への活用)とリテラシー(情報の読み解き)に力点を置いた、新たな学力向上が世界潮流となっており、そこにNIEの学びが求められているという視点。

 もう一つは、公選法改正に伴い、選挙権年齢が18歳以上に引き下げられ、来夏の参院選から適用される中、主権者教育が求められている点だ。一人の主権者、有権者としてこの国や地方をどう考えるか、1票をどう動かすか。NIEが果たす役割は小さくない。

 講演した教育評論家の尾木直樹さんは、中学校教諭時代、国語の授業で実践した「書きなれ(慣れ)ノート」の取り組みを紹介した。記事で面白いと思った箇所には傍線、疑問を感じたら「?」、自分と意見が違えば「×」。そして、文章化を求めたという。

 「新聞を読み慣れる、心を動かし慣れる、書き慣れる。動いた感情を、ひとことでもいいから、書いてごらん。ムカつく、でもいいの。どうムカついたのかって。読解力は、思考力や人間形成の核になるものですからね」

 〈東日本大震災後、鎮魂と復興の願いを込め、毎年5月に開催される東北六魂祭。新聞社から提供された記事と写真を題材に、号外新聞を作ってみよう〉(中学2年の国語)

 〈地元のローカル線について、地元記者にも学びながら生徒が取材し、英字新聞にまとめてみよう〉(中学3年の英語)

 模擬授業では、そんな取り組みも公開された。「新聞を教材に」ばかりではなく、「取材、原稿化、紙面編集という、新聞づくりのプロセスに学ぼう」という取り組みも目立った。

 学校と家庭と地域、教員同士、学校と新聞社、小学校と中学校…。秋田県の学力もNIEも、そんな多層なつながりによって支えられ、模索の道を歩んでいるようだった。

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【ワードBOX】21世紀型学力

 情報化、グローバル化が進む21世紀に求められる新たな学力。経済協力開発機構(OECD)が15歳を対象に2000年から3年ごとに調査している学習到達度調査(PISA=ピザ)にちなみ、PISA型学力、未来型学力とも呼ばれる。OECDは、労働人口のうち製造業に従事する比率が減り、知識情報産業に従事する比率が増える「知識基盤社会」の到来を予測。知識や技能の積み上げではなく、情報を実生活にどう生かすか、その思考力や問題解決力を重視する。


=2015/08/18付 西日本新聞朝刊=

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