地域で子ども支えて 虐待防止フォーラム 大人とつながり重要 福岡市

西日本新聞

 子どもの虐待死ゼロの街を目指そうと、今月4日、福岡市・天神のエルガーラホールで、子ども虐待防止市民フォーラム(福岡市子ども虐待防止活動推進委員会主催)が開かれた。6回目となる今年のテーマは「地域で子どもを支えよう」。参加者たちは、貧困や虐待などで十分な養育環境にない子どもを、どう地域で守り、育てていくかを考えた。

 地域で子どもたちを支えるために必要なことは何か‐。福岡市内を中心に児童、地域福祉に携わる関係者が一堂に会したパネルディスカッションは実践例を紹介しながら熱を帯びた。

 「食べる楽しみを伝えつつ、地域の大人とふれあう機会が作りたかった」。地域の高齢者の見守りに携わる同市社会福祉協議会のコミュニティーソーシャルワーカーの馬男木幸子さん。朝食が食べられない児童が多く、地域の人がそれを心配していた市内のある校区で、屋外でおにぎりと汁物を作るイベントに取り組んだ。子どもの食事は親の責任という風潮もあるが、「親が変わるのを待っていたら時間がない。子どもと、地域の大人とをつなぐことが重要」と言い切る。

 学校現場の実践例は会場の関心を集めた。同市立城香中の古賀理絵校長は「子どもの荒れや非行の背景には、虐待や生活の苦しさがある」と指摘。大人との関わりの中で大切にされている実感が重要と訴え、教諭が学校の廊下で親の代わりに宿題を見る「頑張廊下(かんばろうか)」の取り組みや、地域との連携により「この頃○○君が元気がない」といった情報提供が増えたことなどを報告した。

 児童相談所・福岡市こども総合相談センターで9年間の勤務経験がある、同市東区の大和五幸・子育て支援課長。虐待を受けた子どもやその親を、地域の主任児童委員や弁護士が仕事の域を超えて支えたケースを紹介しながら「子どもや家庭にとって、地域の寄り添ってくれる大人がいかに大切か痛感した」と語った。

 基調講演した大阪市西成区のNPO法人「こどもの里」の荘保共子理事長が討議をまとめるように呼び掛けた言葉が印象的だった。「地域全体で役割分担して支えていくことが、子どもの利益になる。しんどい思いをしている子たちが、生まれてきてよかったと思えるよう頑張りましょう」

 ●基調講演 子の権利保障へ力を NPO法人理事長 荘保共子さん

 基調講演では、大阪市西成区で行き場のない子どもたちを受け入れているNPO法人「こどもの里」の荘保共子理事長が、子どもと家庭を支える「地域力」の重要性を訴えた。講演要旨は次の通り。

 こどもの里は1977年に開設した学童保育「子どもの広場」から始まり、遊び場を提供したり緊急時に子どもや親子を宿泊させたりしている。子どもを里子として育てるファミリーホームも運営。地区の児童相談所や警察、学校、市役所などともネットワークを築き連携を強めている。

 西成区のあいりん地区は日雇い労働者が集まり、父子家庭も多い。子どもの宿泊を始めたのも、日雇い労働者の男性から「長期の仕事に行く」と子どもの預かりを頼まれたことがきっかけ。子どもの最善の利益を優先し応じているうちに、遊び場▽緊急避難の宿泊▽親が育てられない子の養育‐という3階建ての構造になった。

 出会った子どもの中には、弟や妹の面倒を見るために学校に行けなかった貧困世帯の少女や、虐待を受け家出を繰り返した少女もいた。それでも「お母ちゃんが好きやねん」と言う。親を守るために必死になる。貧困に限らず親が精神疾患や依存症の場合もあり、子どものためにも親の支援が重要。また貧困も、親の自己責任だけではなく、不安定な雇用環境を許す社会が生み出すものともいえる。

 子どもの権利には、生きる▽守られる▽育つ‐の他に「参加する・自分で決める」という権利がある。自分の人生を自分で選択していくためには、子どもたちに自尊感情が必要。地域の安心して過ごせる居場所で、貧困や虐待によって低下した自尊感情を回復させるなど、地域で子どもの権利を保障していかなければならない。


=2015/08/22付 西日本新聞朝刊=

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