【ふるさとの守り人】<3>官民、力合わせ踏ん張る

西日本新聞

閉店したガソリンスタンド機能を住民の手で復活させた四万川区の集落活動センター(左端は安井智さん、右端は空岡則明区長)=高知県檮原町 拡大

閉店したガソリンスタンド機能を住民の手で復活させた四万川区の集落活動センター(左端は安井智さん、右端は空岡則明区長)=高知県檮原町

 消えゆくふるさとを守る手だてはないのか。高知県に官民を挙げた先進的取り組みがあると聞き、県北西部に位置する人口約3700人の町、檮原(ゆすはら)町へ向かった。

 檮原町は面積の9割を森林が占める山間地だ。その西端、13の集落に約580人が暮らす四万川区に昨春、「集落活動センター」がオープンした。一見、普通のガソリンスタンドだが、店内には野菜や総菜、ホームセンターから仕入れた苗や長靴、電池に鎌まで売っている。

 「ここがなかったら住めんようになるとこじゃった」。週2、3回、給油に訪れる安井智(さとる)さん(84)は言う。車の運転や農機具にガソリンや軽油は欠かせず、氷点下まで冷える冬は灯油なしで暮らせない。ところが2年半前、地区唯一のガソリンスタンドが閉店してしまったのだ。

 「自分たちでつくるしかない」。住民たちは1株1万円で300株を集め、区を大株主とする株式会社を設立。地域の区長が社長となり、社員2人を雇った。四万川区にはまだ2、3軒の店があるが、どの店主も高齢で後継者がいない。センター近くで食料品店を営む杉本百合子さん(72)は「うちが閉店した後は、センターに店の機能を引き継いでほしい」と話す。

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 住民主導で取り組んだ拠点づくりだが、同社社長で区長の空岡則明さん(63)は「行政の支援がなければ無理だった」と振り返る。

 後押ししたのが、高知県が2012年度に導入した制度だ。

 県は「集落の維持には、生活に必要な機能を備えた“小さな拠点”をつくる必要がある」として、10年間で県内130カ所に集落活動センターをつくる計画を策定した。「拠点をつくりたい」と手を挙げ、自分たちで運営主体を設けた地域に、1カ所6千万円を補助する、という制度だ。

 檮原町はこの制度に独自の補助金を上乗せし、町内6カ所にセンターを設けることを目指し、これまでに3カ所が完成した。

 しかし、センターの助成期間は県が3年、檮原町も5年限定だ。初年度は純利益は出たものの、空岡さんは「過疎地で収益を上げるのは難しく、いつまで続けられるか」と不安を漏らす。

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 道路にひびが入れば、住民たちはコンクリートの材料を役場に取りに行き、自ら穴を埋める。エネルギーの完全自給自足を目指し、現在は3割近くを風力発電などで賄う。

 一方、行政も簡易水道を100%整備するなど、住民が住み続けられるよう手を尽くす。町役場で集落活動センター支援を担当する山本和正さん(35)は「そこに住む人たちを一生懸命守ることが大事だと思うんです」と話す。

 官民、共に踏ん張るのは、「この地域に暮らし続けたい」という、同じ住民としての強い思いがあるからだ。

 町の道路沿いに、手書きの看板が掲げられていた。「間伐で良い木をつくる梼(檮)原町」-。

 間伐することで下草が生えて保水力が高まり、洪水や土砂崩れを防ぐ。そうして「健康」になった山が、自然の恵みである良い木を育て、生み出す。

 集落活動センターによって、この地区に住み続けることができた安井さんは、先祖から受け継いだ17ヘクタールの山を管理する山守の一人でもある。山が守られることで人が暮らすことができ、山も守られる。自然と人が一体となった循環。「きれいな木を育てて、ええ山を作って。それがこの町の生き方だ」。安井さんはそんな生き方を、何とかこの地で続けたいと思っている。 


=2015/08/27付 西日本新聞朝刊=

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