地熱発電 動き活発化 大分、熊本、鹿児島などで開始 国立公園内の開発緩和も

西日本新聞

8月初旬に落成式があった大分県九重町の地熱発電所。国内初の自治体と民間企業による協働方式という 拡大

8月初旬に落成式があった大分県九重町の地熱発電所。国内初の自治体と民間企業による協働方式という

 発電所からの二酸化炭素(CO2)の排出削減が課題となる中、安定して発電でき、CO2排出量も少ない地熱発電への関心が高まっている。一時停滞した時期もあったが、豊かな地熱資源を生かそうと各地で動きが出てきた。

 地熱発電は、マグマの熱で高温になった熱水が地下にたまった「地熱貯留層」を利用する。貯留層を探してそこまで井戸を掘り、噴出してくる水と蒸気のうち、蒸気を分離してタービンを回す。発電後の蒸気を冷やした水や発電に使わなかった熱水は地下に戻す。

 日本最初の松川発電所(岩手県)は1966年に運転を始めた。その後、99年の東京電力八丈島地熱発電所を最後に大型の発電所の建設はストップ。停滞期に入り、今年6月現在で設備容量は約52万キロワットにとどまる。火山国の日本は米国、インドネシアに次ぐ世界3位の地熱資源国。資源量は2千万キロワット超とされるが、資源量の3%足らずしか活用していないことになる。

 国の原発優遇策の中で十分な支援がなかったことや、温泉業者に建設への反対が根強いことなどが、地熱開発が進まない大きな理由だ。適地の多くが国立公園や国定公園内にあり、自然保護政策とぶつかったことも停滞の一因となった。

 それでも固定価格買い取り制度の導入で調達価格が1キロワット時当たり26~40円と定められたことなどから、最近になって大分、熊本、鹿児島、長野各県で、小規模ながら新たな地熱発電所が運転を始めた。

 政府は、2030年までに地熱発電の容量を最大で約100万キロワット増やすことを見込んでいる。

 ●地域への利益還元 課題 江原幸雄・九州大名誉教授

 地熱発電の現状や課題を地熱情報研究所代表の江原幸雄・九州大名誉教授に聞いた。

    ×   ×

 -日本の状況は。

 「日本の地熱発電には発電コスト、公園、温泉という三つの問題がある。コストは固定価格買い取り制度などもあって改善されたが、公園や温泉に関してはまだ課題が残る。地熱の貢献が目に見えるようになれば大幅拡大が可能になるだろう。2050年に総発電量の10%を担う力はある」

 -温泉枯渇への懸念は大きいが。

 「発電に使った蒸気以外の水は地下に戻すし、地下構造や地下水の状況を調べてから開発するので、日本の地熱発電所の中で温泉枯渇を理由に運転をやめた例はない」

 -公園との関係は。

 「国立公園内の地熱開発も環境省の規制緩和も徐々に進んでいる。井戸を斜めに掘る技術、シミュレーションを駆使して景観に配慮した施設の配置を事前に検討するといった技術の開発も進んでおり、自然環境に配慮した形で開発を進めることはできる」

 -問題解決に必要なことは。

 「重要なのは地元の合意。立地地域外からの資本による発電事業という形にするのでなく、地元の出資を募って発電の収益が地元に還元されるような仕組みをつくったり、発電所の熱をハウス栽培やレジャー施設に利用したり多角的な事業形態をつくることも重要だ」

 ▼えはら・さちお 1947年埼玉県生まれ。九州大工学部助教授、教授を歴任。著書に「地熱エネルギー 地球からの贈りもの」など。


=2015/09/02付 西日本新聞朝刊=

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