仕立て直し 思い出つなぐ 専門店の上野さん 古い服も今風に

西日本新聞

客の相談を受ける上野由紀さん 拡大

客の相談を受ける上野由紀さん

体形に合わせてミリ単位で調整する

 買った服がどこかしっくりこない。なかなか自分に合うサイズがない。洋服で悩んだことがある人は多いのでは。仕立て直し専門店「サルト岩田屋店」(福岡市)で昨秋から働く上野由紀さん(34)もその一人だ。

 「同じような悩みを持つ方のお手伝いができればと仕事を始めました」。上野さんは小柄で怒り肩。心配そうに来店した人が、できた服を着てうれしそうな表情になったとき、自分のことのようにうれしくなる。

 上野さんの仕事は「フィッター」と呼ばれる。客の相談を受け、客の体に合わせながら、直す箇所にピン(待ち針)を細かく打っていく。単に「両方○センチ詰める」というような単純なものではない。右肩が下がり気味の人は、右肩に少し厚めのパットを入れたりする。パソコンを使う職業で猫背気味の人は、背中の丸みに注意する。女性は背中とジャケットの間に隙間ができがちなので、ラインに沿わせるようにするときれいに見える。

 体に合った服は、着ていて楽なのはもちろん、おしゃれに見える。古いスタイルを一新するのもこだわり。バブル期のワンピースなら、ウエストの位置を高くすると今風になる。「昔の服は生地が良いので作り替えれば着られます」

 直しの方針が決まったら、工房で服の糸を解き、パーツに分ける。ジャケットならば10個ほど。デザインに合わせ、職人が縫い上げる。上野さんはこれまでに200人ほど担当した。

 対応できる範囲であれば、服飾雑貨のお直しもする。ある40代の女性は、父の形見となった夏用の帽子を持って来た。小学生のころ、運動会で自分たちきょうだいの姿をカメラで追う父はその帽子をかぶっていた。夏はそれを頭に、母と2人で庭の草むしりをしていた。帽子を見ると優しい父親を思い出す。

 頭に触れる部分の革は古くなり、剥がれていた。新しく革を付けてもいずれ古くなってしまう。上野さんは布製のテープを当てた。新しく命が吹き込まれた帽子を見て、女性は「私が笑顔でこの帽子をかぶったら天国の父も喜びます」と安心した様子だったという。

 上野さんは「より多くのアドバイスができるようにもっと勉強したい」と話す。職人に習って、自分の服の仕立て直しに挑戦することが今の目標だ。


=2015/09/08付 西日本新聞朝刊=

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