【生きる 働く 第8部】どうなる「不本意派遣」<4>「安定措置」実効性に疑問

西日本新聞

 福岡県内の住宅設備機器メーカーに派遣されていたプログラマーのタケシさん(50代)=仮名。派遣期間の制限がない専門職として7年間勤めたが、担当していたシステム移行の業務が終わった昨年、派遣終了を言い渡された。

 このような雇い止めで生活が不安定になることを防ぐため、労働者派遣法は今回の改正で、派遣会社に「雇用安定措置」を義務付けた。

 派遣期間が上限の3年に達する労働者について、(1)派遣受け入れ会社(派遣先)に直接雇用を求め、実現しなければ、(2)次の派遣先を紹介する(3)派遣会社が無期雇用する-が中心となる。タケシさんのケースを基に、これらがどう機能するか予測してみよう。

 タケシさんは派遣されていた間、社内ネットワークを1人で管理していた。「自分がいないとシステムは回らない。正社員にしてくれてもいいのではないか」。メーカーに何度か頼んだが認めてもらえなかった。「いつでも私を雇い止めにできるよう、派遣にとどめたかったのだろう」。予想どおり、メーカーの都合で契約更新が止まった。

 安定措置(1)では、派遣会社はメーカーに、タケシさんを直接雇用するよう依頼しなければならない。だがメーカーにこれを受け入れる義務はない。また、受け入れるとしても「あくまで直接雇用であり、短期契約のパートなども含まれる。正社員になれるとは限らない」(福岡労働局)という。

 タケシさんはその後、新たな派遣先を探し始めた。派遣会社が全国各地の求人情報をデータベース化していたので、自分の技術を生かせそうな仕事を検索した。50代という年齢もあり、給料が下がっても勤務地が県外でも仕方ないと条件を下げた。20件以上を選んだが、いずれも採用には至らなかった。

 このような場合も、安定措置(2)の「次の派遣先を紹介した」ことになるのだろうか。

 タケシさんは自ら条件を下げて希望する派遣先を選んでいた。同労働局は、結果に結びつかなかったとしても「『紹介』はしたと判断することになるのではないか」とみている。

 タケシさんは新たな派遣先がなかなか見つからなかったが、派遣会社で無期雇用されていたため、失業は免れた。安定措置(3)と同じ状況だ。ところが給与は大幅に減った。

 からくりはこうだ。この派遣会社では、派遣先がないときは給与の「派遣手当て」がカットされ、待機が長引くほど基本給も下がっていく仕組みだった。メーカー勤務当時は月給30万円を超えていたが、待機に入ると一気に手当て分の13万5千円が減額された。

 このような仕組みでも、安定措置(3)として認められるのか。同労働局は「労働者に不利益な仕組みは望ましくない」としつつも、「手当てを減額するようなケースはまだ想定していない」と話した。

 待機が半年ほど続いたタケシさんに、派遣会社は「このままだと給与が下がり続け、辞めたときの失業保険も減る」と自主退職を促した。結局、それに従った。

 安定措置は、改正法で初めて設けられた派遣労働者の支援策だ。大きな前進といえるが罰則規定はなく、抜け道が見え隠れする。また派遣期間が3年未満の労働者については、「努力義務」にすぎない。

 同労働局は「違反を繰り返す派遣会社は、許可の取り消しも含めて厳しく処分する」と強い姿勢を示す。だがタケシさんは「例えば企業に正社員の比率を義務付けるくらいの措置がない限り正社員は増えない」とため息をついた。


=2015/10/02付 西日本新聞朝刊=

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