「マタハラは日本の経済問題」 「世界の勇気ある女性賞」受賞 小酒部さやかさんが講演

西日本新聞

 ●被害を共感し合い、活力や知恵を 
 妊娠や出産を理由に不当な扱いや嫌がらせをするマタニティーハラスメント(マタハラ)を根絶しようと活動している小酒部(おさかべ)さやかさん(38)=NPO法人マタハラNet代表、川崎市=が9月、福岡市で講演した。小酒部さんは米国務省から3月、日本人で初めて「世界の勇気ある女性賞」を受賞し、注目されている。働く女性の当事者団体、ワーキング・ウィメンズ・ヴォイス(福岡市)が主催した。

 講演会後、小酒部さやかさんと、マタハラなどの被害に遭った当事者による交流会が開かれた。参加者たちは体験を共感することで、傷ついた心を癒やされたり活力をもらったりしていた。

 福岡市内のホテルの契約社員だったAさん(34)。つわりが重く、急に勤務できなかったり出勤数を減らしてもらったりすることが増えた。すると女性上司が「殺したくなってきた」とぽつり。「私はどうしたらいいんですか」と聞くと「有休を消化してから辞めていいよ」。自主退職後も、妊娠した元同僚から「私は我慢して働いている。あなたは『妊婦さま』だった」と責められ、親からも「わがまま」と叱られた。「自分の何が悪かったんだろう。自主退職なのでマタハラではないのかも…」とAさん。

 小酒部さんは、Aさんの事例もマタハラとし「退職の精神的ダメージの上に、周囲から見下されるマウンティング(自分が優位だと主張すること)の被害に遭っている」と分析。解雇などの不法行為でないマタハラは認知度が低く、「私が受けた嫌がらせはマタハラですか」という相談も多いという。

 公務員をしていた男性参加者のBさん(45)=福岡県岡垣町=は、早朝や深夜の重労働で体調を崩した際、上司から「辞めたらどうだ」「発達障害だ」と責められた。「そういう職場はパワハラにとどまらず、オールハラスメント体質」と小酒部さん。Bさんも「私は氷山の一角。泣き寝入りする人が多いのではないか」と懸念した。

 介護職員だった北九州市のCさん(34)は、職場に妊娠を報告したが「特別扱いしない」と重労働の軽減措置を認められず、同僚からは仕事の会話も無視され、うつ病に。職場を相手に慰謝料を求める訴訟に踏み切った。小酒部さんは「声を上げてくれる人は貴重で、きっと多くの被害者の力になる」と励ました。

 ●福岡市での講演の要旨

 私は契約社員だった際に妊娠を理由に退職を迫られた経験から、2014年7月にマタハラNetを設立し被害者の支援や実態調査をしている。

 マタハラには(1)解雇などの不法行為「ブラックマタハラ」(2)精神的、身体的な嫌がらせの「グレーマタハラ」―がある。高度経済成長期の成功体験を引きずった「長時間勤務ができないと半人前」という風土や、女性は家事育児に専念するものという性別役割分業意識が引き起こす。

 マタハラを許容する職場は、男性の育児休業取得などを阻む「パタハラ」や介護休業を希望する人に対する「ケアハラ」も発生しがち。人材流出を防ぐためにも、企業は個々の事例に合わせた対応が必要だ。

 女性の就労率が上がらなければ、年金などの社会保障制度が保てない。マタハラは日本の経済問題だ。人口減少は先進国の共通課題。少子化のペースが速い日本がどう打開するか、世界が関心を寄せている。


=2015/10/17付 西日本新聞朝刊=

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