【生きる 働く 第9部】変わるワークスタイル<3>テレワーク 全員対象

西日本新聞

 会社に出勤せず、自宅やカフェなど好きな場所で仕事をする-。携帯電話やスマートフォン、タブレット端末など、「モバイル」をベースにした暮らしが定着してきたが、仕事についても、時間や場所に縛られない働き方が広がっている。

 リクルートホールディングス(HD、東京)は、上限日数のない「リモートワーク」を導入する。10月から一部子会社でスタートしており、年内にはHD全社員を含めた約2千人が対象となる見込みだ。自宅や外出先のほか、都内のレンタルオフィスを借りて遠隔オフィスとして活用する。

 同社広報は「6月から試行したところ、労働時間短縮効果が大きく、継続希望者が大半を占めた」と説明する。将来的にはグループ全体、社員3万人への拡大も検討している。

 情報通信技術(ICT)を活用した柔軟な働き方を「テレワーク」と呼ぶ。総務省の2014年通信利用動向調査によると、テレワークを導入する企業は11・5%で前年から2・2ポイント上昇した。

 もともと、テレワークは介護や育児をする社員を対象にした限定的な例が多かったが、最近は「全社員」など対象が広がっているのが特徴だ。ここ数年、サントリーや日産自動車など対象者を広げる企業が増えた。

 その一例が佐賀県だ。2008年の在宅勤務制度導入時は、育児や介護中の職員が対象で、利用は10人程度にとどまった。

 その後、13カ所に遠隔オフィスを設置し、タブレット1200台を導入。管理職は週1回の在宅勤務を努力義務とすることなどで利用を促し、昨年10月には全職員4千人に対象を広げた。今では月延べ2千~3千人がテレワークを利用する。

 県男女参画・県民協働課参事の岩永幸三さん(52)は9月に2回、在宅勤務を行った。1型糖尿病患者を支援するNPO法人の事務局長として相談や資料作成に追われており、「終業後すぐにNPOの活動ができるのはありがたい」と話す。

 タブレットで情報共有できるため、現場で仕事がある場合、県庁に戻る必要がなくなった。住民からの要望にも、関係者がその場でウェブ会議を開き、迅速に対応できるようになった。8月に台風15号が接近した際は出勤が困難な中、職員の10%がテレワークを行うなど、災害時や緊急時にも役立っている。

 システムには多重にセキュリティーがかけられ、端末にはデータが残らないという。ICTの進歩が、テレワークの導入を後押ししている。

 テレワークは、都市から地方への人口移動を促す有効策としても期待される。

 今月10日、佐賀県鳥栖市の空き店舗に「さがんみらいテレワークセンター鳥栖」がオープンした。国の実証事業として、県や市などと共同で取り組む人材派遣の「パソナテック」(東京)の吉永隆一社長は、「新しい働き方を実現するとともに、新たな仕事を開拓して雇用の場を提供したい」と力を込めた。

 同社は、一部業務をセンターで行う方針で、社員5人程度を派遣し、現地で約20人を雇用する計画だ。8月に名古屋市から来た同社マネジャーの田上加那さん(42)=熊本市出身=は「九州に戻りたいと思っていた。通勤ラッシュもなく、物価も安くて暮らしやすい」と話す。今後は、大都市にある他の企業にもセンターを拠点にテレワーク導入を呼び掛ける計画だ。

 日本テレワーク協会(東京)の今泉千明主席研究員は「セキュリティーに強く価格的にも導入しやすいシステムが普及し、いつでもどこでも仕事ができる時代になった。移動時間がなくなったり集中力が高まったりすることで生産性もアップすると、企業にとってもメリットは大きい」と指摘する。


=2015/10/22付 西日本新聞朝刊=

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