【自由帳】主権者教育 取材メモから 学びを深める中立授業って? 生徒会活動の再考求める声も

西日本新聞 四宮 淳平

 選挙権年齢が18歳以上に引き下げられ、来夏の参院選から適用されるのを前に、文部科学省などが主権者教育の高校生向け副教材を作成、近く各学校に配布される。模擬議会や模擬投票をモデル授業の柱にしているが、それで主権者意識は育成されるのか。報道センター記者たちが取材メモを振り返った。

 「授業で政治課題について賛否両論を紹介すると、生徒から必ず問われる。で、先生はどう考えるの、と。そこで教師があいまい対応、無回答でいいのか。特定の政策や思想への誘導にならないよう、政治的中立性への配慮は必要だが、教師が踏み込まなければ、生徒の考える力は育たないのではないか」(A教諭)

 教育担当の森井徹記者(36)には、そんな言葉が印象に残った。「当たり障りのない授業をしている」と打ち明ける教員もおり、現場が苦心していることがよく分かった。「国が中立性を強調するあまり、現場が萎縮してしまうのではないか」という懸念も感じた。

 「安全保障、原発、憲法のあり方など、賛否が分かれる今の政治こそが生きた教材だが、完全な中立とは難しい。アクセルとブレーキを同時に掛けられている感じ」(B教諭)

 二論、三論、それぞれに一理ある。そのとき、自分なりにどういう根拠で、どう判断し、一票を投じるか。多様な考え方に学びながら、思考の流儀のようなものを学ぶ中立授業とは。その姿を先生たちも描けないでいるようだった。

 ☆ ☆

 「単なる投票の予行演習ではなく、主権者としての自覚や責任の醸成につながる教育が必要」。施光恒・九州大准教授(政治哲学)は、大学担当の古川幸太郎記者(36)にそう語った。

 施准教授は近著「英語化は愚民化」で、グローバル化の時代、英語の早期教育を進めようとする国の政策にくぎを刺す。「政治や政治教育が一つの道具のように扱われている」。施准教授はそんな話もした。

 多くの国が導入する「18歳選挙権」は、ある意味で世界標準。1票の高齢化が進む中での「シルバー民主主義」のひずみ解消にもつながるだろう。だが、どうも投票率アップの手段として若者が利用されているようで、気掛かりだという。

 真の主権者とは何か。古川記者は考えさせられた。

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 「地域に役立つ政治の役割を、いかに生徒が実感できるようになるか。それが主権者教育の第一歩ではないか。そのためにも生徒会活動のあり方も見直すべきではないか」(福岡県内のある市議)

 県政担当の四宮淳平記者(35)は「学校の授業も大切だが、自ら考え行動する人として成長していくには、学校自治という学びの場も忘れてはならない」と思った。政治選択を考える地頭(じあたま)づくりの入り口は、教科書や副教材ばかりでなく、生徒の身近なところにあるのかもしれない。

 「高校の教科『公民』の学習だけで学べるものではない」。そんな高校教諭や管理職の声も多かった。小中学校からの討論型学習の積み上げ、法教育に取り組む弁護士たちとの連携や授業研究、家庭での主権者教育なども求められているようだ。


=2015/10/24付 西日本新聞朝刊=

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