【生きる 働く 第9部】変わるワークスタイル<5完>生産性向上 企業に利点

西日本新聞

 「100人いれば、100通りの働き方がある」。ソフトウエア開発、サイボウズ(東京)が掲げる人事制度の柱だ。

 同社はかつて、土日出勤は当たり前、終電前に帰れないという「ブラック企業」だった。2005年の離職率が28%となり、働き方の改革に着手した。現在は4%まで改善したという。

 最大の特徴は、社員がそれぞれのライフスタイルに合わせて働き方を選べること。ワーク重視なら裁量労働、ライフ重視なら在宅で短時間など、働く時間や場所を組み合わせた9通りから選択する。どの働き方を選ぶのも理由は問わない。育児中で完全在宅勤務の人、二つの企業で働く人、終業後に学校に通う人など、多種多様だ。

 日によって時間や場所に縛られず働く「ウルトラワーク」も導入した。例えば、事業支援本部長(38)は10月下旬のある日、午前中は自宅からウェブで三つの会議に参加し、午後は長女の授業参観に行った。社外での打ち合わせ後にカフェで仕事したり、帰省先のオフィスで数日働いたりと、誰もが申請だけで利用可能だ。

 社員同士が顔を合わせなくなるため、部署を超えてコミュニケーションを取りやすい仕組みもつくった。社員10人以上が集まるイベントや誕生会、部活動などの費用を会社が助成する。お酒を飲みながらさまざまなテーマについて語り合う「仕事BAR」も定期的に開く。

 青野慶久社長(44)は多様な働き方の導入を「福利厚生ではなく、生産性を上げるため」と言い切る。中根さんは「選べるということは、自分の責任で結果を出さないといけないということ。実は会社が敷いたレールの上を歩くよりずっと厳しい」と話す。

 「専業禁止」を掲げ、副業を推奨する企業もある。

 オンラインショッピングなどを展開するエンファクトリー(東京)では現在、22人の社員の半数が副業をしている。

 顧客サポート担当者(33)が入社したのは「専業禁止」という方針に興味を持ったからだ。以前働いていた会社が倒産し、「会社に寄りかかって生きたくない」と思っていた。入社1年後、犬用の手作りグッズや洋服のインターネット販売を始め、現在は納品まで3カ月待ちと売れ行き好調だ。山崎さんは「副業の時間を取るため、残業はしたくない。業務を効率化する工夫をしてスピードアップした」と話す。

 多くの企業が副業を禁じる中、なぜ推奨するのか。加藤健太社長(49)は「優秀な人材に来てほしいから」と説明する。唯一の条件は副業をオープンにすること。「副業ではなく“複業”。会社の仕事も手を抜けなくなるし、もう一つの仕事で培われた経験や人脈が生きる。お金がかからない人材育成方法だ」。制度導入後、残業は2割減り、会社の業績も伸びている。

 副業がメーンとなり退職する社員もいるが、退職後も仕事で協力し合う「フェロー」という仕組みで、互いにプラスの関係を築けているという。

 2025年、働く人の数は6274万人から6091万人に減少し、1人当たり所得も355・4万円から341・5万円へ減少する-。

 リクルートワークス研究所は今年6月、10年後の労働市場を予測し「2025年 働くを再発明する時代がやってくる」と題してまとめた。人口減少と高齢化により、人材不足が深刻化。その一方、技術の進歩に伴い人材余剰が起きる業界もある。中村天江(あきえ)主任研究員は「深刻なミスマッチによって『人が余っているのに人が足りない』という状況に陥る」と説明する。

 多様な人材を生かす、新しい働き方の「発明」をしなければ、社会の活力は維持できないという。「企業にとって個人の事情に合わせた働き方をつくるのは、短期的にはコスト増となるが、長期的には生産性アップになる。魅力的な働き方を提示できなければ、淘汰(とうた)される時代がくる」

 =おわり


=2015/10/24付 西日本新聞朝刊=

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