【自由帳】アクティブ・ラーニング 自分の言葉で語り、学ぶ

西日本新聞

 教育講演会や研修会で最近、やたらとこの言葉に出合う。「アクティブ・ラーニング」。教員が一方的に教える講義形式ではなく、児童生徒同士の話し合いや討論を重視した学習方法だ。文部科学省が2020年度から小中高校で順次導入する新学習指導要領の柱にしようとしていることもあり、はやり言葉のようになっている。でも、アクティブ・ラーニングって何? 授業はどう変わろうとしているのか。

 福岡県那珂川町の安徳北小学校(児童数742人)。2年生のクラスでは、かけ算の九九を、この授業手法を取り入れて学ぼうとしていた。九九学習といえば暗唱反復型が中心だが、そうではなかった。

 先生が黒板に書いた「めあて」(学習目標)は「たてやよこを見て、九九のきまりを見つけよう」。

 黒板の九九一覧表を見て、児童はまず自分なりに気付いたことを書いた。「5の段の1の位は0、5ばかり」「9の段の1の位は一つずつ減っていく」

 通常なら、それから4人程度のグループ学習に向かうが、先生の次の指示は違った。「誰とでもいいから、話し合ってごらん」。児童たちは一斉に席を立ち、相手を見つけては、話し合いが始まった。

 グループ学習では、説明役と聞き役が固定されがち。この手法では全児童が双方の役割を担うことになる。担任の前川恭平教諭(25)は「より重視しているのはアウトプット(友達への説明、自己表現)。自分の理解を、友達にちゃんと説明できて、初めて自分のものになる」と話す。

    ☆   ☆

 アクティブ・ラーニングに向け、同校では脳科学の「メタ認知」の手法も取り入れ、授業改善に取り組んでいるという。

 メタ認知とは、平たく言えば「自分の外にもう一人の自分を立て、自分と対話する脳機能」。自分が気付いたこと、見つけたことは何か。なぜ面白い、おかしい、不思議と思ったのか。もう一人の自分を設定し、自問することで、より理解を深めようとするものだ。

 授業の中で友達に分かりやすく伝えようとする場面が増えれば、「メタ認知」の機会が増え、より深い学びにつながっていく。九九学習のワイワイ、ガヤガヤの話し合いには、そんな狙いがあった。

 同校がこうした授業改善に取り組む背景には、学力格差があるという。「僕はできないから」「何となく分かった」。最初から学ぶことを諦めている子どもたち(学びからの逃走)、核心理解には到達していないのに、理解できたかのように振る舞う子どもたちの学びを改善し、学力の底上げにつなげたい考えだ。

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 宮本泰司校長は「子どもたちが『あっ、そうか』とつぶやく瞬間がある。分からないことが、分かるようになる瞬間だ。そのために最も有効な問い掛けが『自分の言葉で説明してごらん』。それがメタ認知への入り口だと思う」。そんな学びの場面を増やすことが、アクティブ・ラーニングへの道筋だと考えている。

 例えば、国語の授業では通常、物語の場面や表現の読み解きが中心になる。だが、同校ではそうした学習ばかりでなく、「もし、自分が主人公だったら」「物語に続きがあるとすれば、どんな物語か」といった問いも設定。児童たちが発表し合う授業にも取り組んでいるという。

 「教え上手は学び上手」と言う。先生の言葉ではなく、子どもたちが自分なりの言葉で相手にどう伝えるか。そんな教室での場面づくりが、アクティブ・ラーニングの一つの鍵を握っているようだった。


=2015/11/03付 西日本新聞朝刊=

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