【自由帳】高校生 政治活動どこまで 「校内禁止」 線引き困難

西日本新聞

 来夏の参院選から適用される見通しの「18歳選挙権」導入を前に、高校生の政治参加のあり方が注目されている。投票、集会、デモ…。一部が有権者となる高校生の政治活動は、どこまで認められるべきなのだろうか。

 10月下旬、活水女子大(長崎市)の日本国憲法の授業。1年生中心の約80人のクラスでは、高校生が校内での政治活動が禁止・制限されていることについて、5人ほどのグループに分かれて論議。あるグループは「賛成」の立場から発表した。

 「学校は学生が勉学に励む場。学業に支障を来さないためにも納得できる」

 これに対し、憲法学を専門とする渡辺弘准教授(47)は問い掛けた。

 渡辺 では、大学生はどうして自由に政治活動ができるの?

 学生 大学は単位も全部、自己責任だから。

 渡辺 高校も自己責任だよね。休めば卒業できないし、勉強すれば成績が上がる。

 学生 高校を卒業し、働く人もいる。大学生を制限し、社会人には制限がないなら不平等。

 渡辺 じゃあ、高校に行かなかった人は。

 学生 ほとんどの人が高校には通っている。

 渡辺 区切るなら義務教育の中学と、高校の間じゃないですか。

 学生 高校も大学も、学校での政治活動は駄目だ、とすれば…。

 議論は尽きなかった。

    ☆   ☆

 旧文部省は1969年、全国の都道府県教育委員会に、学校内外を問わず高校生の政治活動や選挙運動を禁止する通知を出した。

 背景には当時、活発化した学生運動があった。下火になった後も通知は残り、「高校では政治問題をタブー視する要因になった」(福岡県内の高校教諭)。

 今年6月に改正公職選挙法が成立し、選挙権年齢は「18歳以上」に引き下げられた。高校生の一部にも適用されるため、文科省は10月に新たな通知を出した。

 通知では、「政治的中立」を求めた教育基本法を踏まえ、生徒たちの放課後や休日、校外での政治活動や選挙運動は容認。授業や生徒会活動、部活動は「教育活動の一環」として、校内での政治活動は禁じる。

    ☆   ☆

 だが、政治活動の線引きは難しそうだ。デモや集会のように、目立つ活動でなかったら、どうなのか。活水女子大の授業でも、そこが議論になった。

 例えば、教室で特定の法案に賛成を呼び掛ける手紙を回覧したり、スマートフォンの無料通信アプリLINE(ライン)に書き込んだりする行為は‐。

 「手紙を回しているかどうかは、全員を一人一人見ていないと分からない」「携帯電話の中身を見せろってことですか」。疑問や不快感が学生の口をつく。

 一方、憲法21条では「表現の自由」に加え、検閲の禁止も通信の秘密も規定されている。渡辺准教授は授業をこう締めくくった。

 「政治活動は一般的な勉強とは違うかもしれないが、『主権者の本分』といえる。憲法で国民に認めているのに、学生だから認めないのはおかしくないかな」

 授業後のリポートには「学校ではたくさん学ぶことがあるので(政治活動は)制限してもいい」「他人に迷惑を掛ける場合は控えるべきだ」などの意見に加え、こんな記述もあった。「以前からデモに参加している高校生はいる。新たな通知は現状を追認している」

 政治と高校生の関係。それは国や先生が決めるべきものではなく、高校生自身が決めていくべきものではないか。大いに悩みながら。それこそが「主権者教育」ではないか。議論を聞きながら、そう思った。


=2015/11/24付 西日本新聞朝刊=

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