【食の力】みそ汁を味わう<1>脳を刺激 心身安らぐ

西日本新聞

 「あっという間になくなったよ。毎日作るようになってすぐだった」。古里の熊本市を離れる前、母親と一緒に買ったみそ。九州大(福岡市)の選択科目「自炊塾」の受講生、中川理香子さん(19)=理学部1年=はみそ汁の話題で隣の学生と盛り上がった。

 入学して半年、みそを使ったのはスープに入れた大さじ2杯だけだった。10月中旬、自炊塾でみそ汁作りの宿題が出て以来、ほぼ毎日使うようになった。

 自炊塾は食を通じて健康や環境について考える力を養う少人数セミナー。シェフや農家ら外部講師の講義、調理や農業実習もある。インターネットの交流サイト、フェイスブック(FB)に挙げる自炊の回数が評価の点数になるのも特徴だ。

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 中川さんが自炊塾を後期科目の一つに選んだのは、生活に役立ちそうだったからだ。友人は「料理を作って単位がもらえるし楽しいよ」と勧めてくれた。

 それまでは学食など外食ばっかり。もともと菓子作りは好きだったが、料理は「包丁もうまく使えず、ままごとのようだった」。

 みそは入学前にそろえてもらった調味料の一つ。でも「いらないなあ」と思った。みそ汁は嫌いだし「腐ったらポイするしかないか」と受け取った。「飽きていたんだと思う。どこに行ってもみそ汁だったから」

 宿題が出たのは3回目の授業だった。最初のみそ汁には大好きなカボチャ、それにタマネギ、エノキタケを入れた。久しぶりに味わうみそ汁。「温かくておいしいなあ」としみじみ感じた。

 FBに自炊の証明となる写真を挙げる。「おいしそう」という受講生仲間の反応もうれしくて、回数が増えた。必ず添えるみそ汁には、買いだめた野菜やキノコを冷蔵庫から取り出し、少しずつ切って鍋に「ポイポイッと入れる」。熊本名産の南関揚げは欠かせない。普通の揚げ豆腐より汁を吸って「ジュワーとおいしくなる」。実家では煮物などに必ず入る母の味だ。

 だしは熊本から持ってきただしパック、気合を入れて作るときは授業で習った昆布とかつお節を使う。「(水やお湯に入れて)ほっとくだけなんだけどおいしい」。みそを溶く。風味が立ち上がる。口に入れたときのじわっと染みわたる感覚が好きだ。何より「ほっとする時間が増えた」。

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 そんな心地よさはどこから来るのだろう。「好ましい味がするのは、本能が積極的に食べなさいと指示しているから」。食品・栄養学が専門の伏木亨龍谷大教授はこう表現する。昆布やみそのアミノ酸が豊富なみそ汁は、脳内の快感物質〓(〓はベータ)(ベータ)エンドルフィンの分泌を刺激する。これが満足感や安らぎにつながる。本能にくすぐられて心も体も和むという。

 きょうも冷蔵庫を開けてみる。使い切れずに残っていたブロッコリー。「使ってあげないとかわいそう」と入れたら彩りがよくなった。ちょっと頑張ったなと思える日は、具材を増やす。みそ汁は「プチぜいたく」を楽しめるふだん料理。シイタケのかさに飾り切りをしたりもする。そんな工夫も楽しい。

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 日々の糧であり、命の源となる食。新シリーズ「食の力」は、そのさまざまな力を切り取ります。第1弾は「自炊塾」を舞台に、最も身近なメニューとして暮らしに溶け込む「みそ汁」を味わいます。

 ▼みそ汁と新聞カフェ 「朝の習慣」再構築キャンペーンの一環。7~25日の平日(14日を除く)午前7時~8時半、福岡市・天神のエルガーラビル1階に開設します。日替わりみそ汁とおにぎり、朝刊1部のセットを500円(税込み)で販売。持ち帰りも可。問い合わせは本社販売局企画開発部=092(711)5430。


=2015/12/01付 西日本新聞朝刊=

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