【第1部 成長都市の実像 福岡市から】<6完>記者ノート 「生き方」自問する好機

西日本新聞

 カメラの前で肩を寄せ合う2人の表情は晴れやかだった。10月、福岡市内で開かれた「結婚」を祝う式。女性67歳、男性73歳。未婚だった女性は一昨年、介護していた母親を失い、「急に寂しくなった」。男性も昨年、妻を亡くしていた。

 婚姻届を出さず、新婚生活は別居から始める。2人を引き合わせた出会いを支援するNPO法人が、別居を勧めた。長年の生活習慣が染みつき、すぐ同居するとうまくいかないからだ。

 こうした別居婚のお年寄りは静かに増えているという。ともに暮らし、産み育てる結婚。そんな固定観念に縛られない、新しい生き方の「かたち」である。

 記者4人が福岡市を歩き、人口減少社会の「芽」を追った。男性は安定した職が得られず、女性は「男社会」で結婚・出産に踏み切れず、子どもを預ける場も十分ではない。高齢化は深刻さを増し、お年寄りの孤立が進んでいた。成長都市の実像は、まさに人口減少社会の「縮図」だった。

 こうした現実を逆手に取ったかのような暮らしを実現する人たちにも出会った。「シニア婚活」するお年寄り、見知らぬ者同士でつながりを紡ぐ「おひとりさま」女性、都会から田舎に回帰しようとする若者たち。日本は今も成長軌道への期待感に覆われている半面、生活実感との差に首をひねる人たちがいる。超高齢社会を迎え人口が減少局面に入った今だからこそ、時代に合わせた新しい価値観が生まれているのだろう。

 高度成長期に社会に出て、働き続けた67歳の男性。60代で事業に失敗し、離婚し、家を失い、路上に横たわった。「働いてお金をもらうのが当たり前。生活保護を受けるぐらいなら死のうと」。まだ頑張らなければ、と思っていた。「生きにくさ」を抱え込んでいる人は、なお少なくない。

 人口減を食い止めるにはまず、産み育てたいと思う人にとって障壁になっているものを取り除く必要がある。それが功を奏すまでは、若い女性の減少によって人口は減り、超高齢化も避けられない。生きにくさの「芽」はさらに膨らみ、より深刻な問題として社会に立ち現れるかもしれない。

 迫り来る「成長後」を思い描き、どう対峙(たいじ)するのか。私たちの生き方や価値観はこれまで通りで良いのか。取材を通じ、記者たちは自問した。来春の統一地方選までに選挙を迎える候補者たちも思い巡らせてほしい。人口減少社会の入り口に立った街の未来図を。 =おわり

=2014/11/07付 西日本新聞朝刊=

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