【第4部 どうみる「地方創生」 1票の前に】<5完>佐賀県知事 山口祥義氏(49) 「お上」依存から脱却を

西日本新聞

 地方創生を生かすには、右肩上がりの呪縛から解き放たれなければならない。戦後、急速に工業国になり、人口が増え続けた時代の方が特別だった。お上を信じてついていく中央依存の時代は終わり、農山村の魅力やコミュニティーを取り戻す時を迎えた。

 地方自治体が、数値目標などを定める地方版総合戦略をつくれば、国から交付金が下りてくる。この仕掛けが「国主導の地方創生だ」と誤った認識を地方に抱かせることを危惧している。交付金をもらうためだけに戦略をつくる自治体が出てくる恐れもある。かつては国が公共事業を田舎に下ろし、人口を保ってきた面もあるが、そのやり方はもう通用しない。

 総務省の過疎対策室長などを務めて全国の事例をみてきたが、お金の配り方は難しい。補助金が出ず、自らの資金で農家レストランの経営を始めたからこそ住民が本気になれた、という地域もある。お金は使い方次第で生きることもあるし魂を失わせることもある。

 半面、地方創生交付金のおかげで初期投資ができる。今までできなかった活動をスタートできれば、可能性が広がる。まずやってみて、失敗を繰り返しながら成功に結びつければいい。

 成功の鍵を握るのは「交流」だ。佐賀の人は、なかなか佐賀の良さが分からない。日ごろから会っている仲間と話すと「佐賀はなんもなかもんね」となる。でも外部の視点が入れば、その土地の心地よさなどが浮かび上がる。交流すれば、誇りを取り戻せる。

 都会から田舎に人が戻る日も、そう遠くないと思う。団塊の世代が大量退職したが、仕事人間だった男性は、都会の暮らしに寂しさを感じる人も多い。田園での語り合いなど、都会より豊かな地域があることに気づき始めている。都市部近くの田園が好まれる傾向があり、何とか佐賀を「壮大なる田舎」にしたい。福岡で働き、佐賀で暮らせば、休日に家庭菜園を耕せる。

 地方創生を行政の器で終わらせず、住民に参加してもらい、本気になってもらえるかどうかだ。首長選や議員選の低投票率をみても「住民不在」が続く。議員は住民から地域課題を聞き、解決する「かかりつけ医」だ。そんな存在が地域からいなくなれば大変だが、実際はどうか。首長も議員も時間をかけ、街を良くしようとする住民との対話を重ねなければならない。地方創生に特効薬はない。=おわり

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 埼玉県出身で、両親の古里が佐賀県白石町。1989年に旧自治省(現総務省)入りし、長崎県総務部長などを歴任。過疎対策室長と東京大教授(地域政策)を併任し、JTB総合研究所地域振興ディレクターも務めた。2015年1月の佐賀知事選で初当選した。

=2015/04/26付 西日本新聞朝刊=

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