【第4部 どうみる「地方創生」 1票の前に】<4>熊本県嘉島町長 荒木泰臣氏(68) 奇抜さより民意を形に

西日本新聞

 熊本市に隣接する熊本県嘉島町は1990年に人口が約7300人まで落ち込んだが、増加に転じ、2014年に約9100人まで伸びた。住民の意見を聞き、その知恵を生かし、地理的にも地形的にも恵まれた土地を生かしたからだ。全世帯を対象に、町の将来像を聞くアンケートをしたのが転機となった。

 町は四方を河川に囲まれ、水害に悩まされ続けてきた。1987年に熊本市に編入合併を求めたが断られ、自らの手で町を再生するしかなかった。当時は合併への期待が高かった分、誰もが希望を失っていた。行政内部で将来像を描いたところで町民に伝わらない。だから、まず生の声をアンケートで集めた。

 町のイメージを聞いたら「水害が常襲する町」が多かったが「水に育まれた水郷の町」もあった。何が欲しいか、には「大型店舗」「金融機関」とあった。要望を反映させ、まちづくり構想をまとめた。

 河川改修すれば水源は強みになる。ビール工場も誘致できた。熊本市中心部に近い平坦な土地だから、宅地にも使える。区画整理すると家が増え始め、大型商業モールもできた。

 地方創生を掲げる国は「頑張って知恵を出した自治体を支援する」という。「今でもみんな頑張っているのにこんな状況だ」と言いたくなる。奇抜なアイデアだけが必要とは限らない。どんなに知恵を出しても、立地や地形に恵まれない自治体は苦しんでいる。地方を創生するなら、そこを末永く支援するのも国の役割でないだろうか。

 嘉島町も地方版総合戦略を練っている。とにかく住民の声を重視し、奇をてらわないものをつくる。待機児童問題など人口増加に伴う現実の課題があり、保育所の増設や下水道整備を盛り込みたい。背伸びした行政サービスを競うより、地域の実情と身の丈に合った施策こそ求められている。

 国の規制がまだ、まちづくりの障壁になっている。整備されていない農地を住宅地や工場用地に活用したくても「50ヘクタール以上」「製造業に限定」など、時代に合っていない。そうしたルールを緩和するだけでも、地域づくりは円滑に進む。

 今のところ町は人口が増えているとはいえ、社会保障費の増加に税収の伸びが追いつかない。首長も議員も、住民受けすることばかりでなく、痛みの話もしないと成り立たない時代を迎えていると痛感している。

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 熊本県嘉島町議を経て1987年から町長を務め、今年1月、九州の現役町長では最多の8選を果たした。昨年10月には国の地方創生基本政策を検討する会議で、町の人口を増加に導いた手法について報告した。全国町村会の副会長を務める。

=2015/04/25付 西日本新聞朝刊=

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