性的少数者 企業の配慮は 研修や支援者配置 取り組み報告

西日本新聞

 東京都渋谷区と世田谷区で、11月から同性のカップルに結婚に相当する「パートナーシップ」と認める証明書や宣誓書の受領証を発行する行政サービスが始まった。LGBT(性的少数者)の従業員や顧客に対応する企業の動きも相次いでいる。多様性を尊重する機運が高まる中、都内で開かれたLGBTの人たちが自分らしく働ける職場づくりについて考えるイベント「work with Pride」の様子を報告する。

 「紙切れだけれども、これが持つ重みは法的根拠よりもあるだろうと思った。そして実際に今、確実に変化が起こりつつある」

 基調講演で長谷部健・渋谷区長がパートナーシップ証明書発行の経緯や今後の展望について語った。渋谷区の動きに対応し、複数の生命保険会社で同性パートナーを死亡保険金の受取人に指定できるようになり、携帯電話各社は家族割引の対象を拡大。企業や自治体の問い合わせも相次いでいるという。

 長谷部さんは区議時代の2012年6月に、証明書の発行を議会に提案。当事者の友人たちに悩みを聞き、何かできないかと考えたのがきっかけだったという。LGBTへの理解は人権問題だが、当事者以外の人には伝わりにくい。そこで、海外の先進都市では当たり前で、渋谷が国際都市として発展していくために必要だと、街づくりの視点から訴えてきたという。

 「当事者に会って話を聞けば、普通のことだと分かるはず。これはマイノリティーの問題ではない。マジョリティーの人々の意識変化が求められている」と力を込め、今後の企業の動きへ期待を寄せた。

 イベントは日本IBMなど4団体が企画し、今年で4回目。研修の実施や社内指針の変更など、企業からLGBTに対する取り組み事例も報告された。ゴールドマン・サックス証券は、5月にゲイを公表した社員と直属の上司が登壇
し、カミングアウトの状況やその後の変化を紹介した。

 同社法務部の稲場弘樹さんは入社14年目で、5月に初めてカミングアウトした。同社は、社内に当事者や支援者のグループがあり、LGBT学生を対象に就職説明会を行うなどLGBTへの支援が充実しており、「居心地が良く、いつでも言える状況だった」と稲場さんは振り返る。

 カミングアウトを決意したのは、法務部長の藤田直介さんの姿勢に心を動かされたからだという。「みんなが120%実力を発揮できる職場にしたいと思っていた」と藤田さん。機会があるたびに、LGBT研修の内容を部のメンバーに話したり、支援者を示す旗を置いたりした。

 稲場さんが「自分がどんな人間か分かってもらえたことで絆が深まり、働きやすくなった。実は、こんなに変わるとは予想していなかった」と言えば、藤田さんは「以前は優秀だが積極性に欠けると思っていた。カミングアウトをきっかけに、以前の3倍エネルギッシュになり、周囲を引っ張るような積極性が見られるようになり、部内まで明るくなった」と評価する。

 米国や英国などでは、企業のLGBTに対する取り組みを非営利団体が評価し、公表している。国内では動き始めたばかりのLGBT支援。work with Prideでも、海外と同様の取り組みを始め、来年から公表する予定だ。


=2015/12/11付 西日本新聞朝刊=

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