【生きる 働く 第11部】均等って何? 雇用機会均等法30年<1>役割意識 男性にもずしり

西日本新聞

 朝は時間との闘いだ。昨夜の鍋料理の残りにご飯を入れて火に掛け、娘のバッグにミルクとお茶を詰める。今日は取引先と会うからジャケットで出掛けよう。できた雑炊を少し冷まし、むずかる娘に食べさせる。

 ここで皆さんは、どんな親子をイメージしただろうか。保育児と働くお母さん? これは福岡市の自営業(39)の日常だ。妻(31)と共働き。朝食は身支度の速い夫が準備することが多い。

 働く上での性差別を禁止した男女雇用機会均等法は、今年で施行(1986年)から30年となる。この夫婦のような共働きの世帯が増え、妻が家事や子育てを引き受ける専業主婦の世帯は全体の15%を割った。労働人口の約43%を女性が占め、「均等」に近づいたように見える。しかし女性の約57%は非正規雇用で、女性管理職も約11%と先進国の中でも最低水準だ。なぜ、格差は埋まらないのだろう。

 出産と授乳以外の育児は父親もできるのに、男性の育児休業取得率は2%台。私たちの多くは今も、育児と聞くとまず「お母さん」を思い浮かべる。この染みついた感覚が、さまざまな働きづらさの根底にあるのではないか。そんな視点から、この連載を始めたい。

 「独身時代は自分のことだけ考えればよかったが、家庭を持つと、理想的な働き方とのギャップを感じるようになった」

 以前は夫婦そろって仕事漬けだった。だが妻の生活は2年前の出産で一変。夫の仕事を理解しつつも、不眠不休の育児に戸惑い、仕事ができないもどかしさを抱え込んだ。

 夫も、本当はもっと子育てに関わりたかった。でも「週2日は夜7時までに帰る」と約束し、残業を持ち帰るのが精いっぱい。仕事と家庭を両立しようともがいても、ささいなことで衝突が絶えない。「離婚」がちらついたとき、働き方を変えるしかないと思った。

 夫は昨年、会社を退職。「家族との幸せな時間があってこそ、仕事でも誰かの役に立てる」。妻と、子育て期のワークライフバランス(仕事と生活の調和)を応援する会社を起こした。

 妻は昨年、熱のある娘を実家に預けて仕事をしたときの心苦しさをコラムにつづった。インターネットに掲載されると、共感の一方で母親批判の書き込みが相次いだ。

 「女性を尊重しろとか、社会進出をうたいながら、母親の育児や教育、管理義務は放棄する矛盾」「仕事が免罪符になるのは一家の大黒柱だけ。それ以外は趣味やレジャーのための育児放棄と同じ」

 妻は「これが母親に対する社会の見方なんでしょうね」とため息をつく。子育てや家事は妻に任せるべきだという風潮や、長時間労働に苦しんでいる父親も少なくない。親になって初めて気付いた。

 書き込みにもあった。「女性が子どもを産むことで母親として以外の人生を奪われるというのなら、男性も家庭を維持する『働き蜂』として以外の人生を望めなくなる」。夫には、その思いがよく分かる。

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 ●メモ=男性と家庭

 バブル期の1989年、合計特殊出生率が特に低い丙午(ひのえうま)の66年の時を下回る「1.57ショック」で少子化問題が注目され、91年に育児休業法ができたが出生率低下に歯止めはかからなかった。99年には「育児をしない男を、父とは呼ばない」という標語が話題をさらった。国は少子化対策のポスター=写真=に人気ダンサーSAMさん親子を起用し、男性の育児時間を増やそうと呼び掛けた。政府は2007年からワークライフバランスを推進しているが、仕事と家庭をめぐる男女格差は根強く残っている。


=2016/01/05付 西日本新聞朝刊=

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