【地域再生座談会3】豊かさの価値観見直す

西日本新聞

川口氏 隠れた豊かさ伝えたい

 -地域社会が元気になる方法、実践例は?

 川口 MITで活動しながら、暮らしと産業と地域の一体化を実践したいと思っている。地元の人には「コメをつくりたいという変な若者が来た」という感じだろうが、みんなが諦めていた田んぼを復活させようとする若者がいることに意外と元気づけられるようだ。

 地区のお年寄りは、「もうここでは暮らしていけないから都会に行きなさい」と子どもたちを一生懸命勉強させた。対馬の中でも「学者村」と呼ばれたほどだ。豊かだからこそ教育に力を注げたのだろうが、子どもたちを都会で働かせ、対馬では最も早く過疎化が進んだ。産業がなかったので子どもを戻せなかった。

 -つらい話だ。

 川口 そこで、地域の暮らしを体験することこそが学びになると考え、島外の若者を対馬に約1週間招く「島おこし実践塾」を年1回開いている。耕作放棄やコミュニティーの弱体化など地域の課題を考えてもらう場だ。一番の成果は、都会の若者がホームステイ先のおばあちゃんが作ったみそなどを「すごい」「こんなにおいしいものは食べたことがない」と言ってくれること。

 豊かじゃないと思っていた地域の暮らしが実は豊かだったことに、住民自身が気付かされる。豊かさの価値観を見直さなければいけないのは、都会だけではなく地域も同じ。地方に住む人も誇りをもって暮らせるし、そんなつながりが広がればいい。

 山口 三つの点で価値観を変えることだ。まず「競争」から「協力」。野球に例えると、レギュラー枠9人に対し部員100人がしのぎを削ってきたのがこれまでの日本。しかし、今の地方には、そもそも部員が8人しかいない。自分の守備位置は右翼だけど投手も兼ねないといけない。そんな協力が必要になる。二つ目は、「所有」から「共有」。3人が同じような車を1台ずつ所有するより、軽トラックとワゴン車、バイクを共有した方が豊かに生きられる。最後は「依存」から「自立」。津屋崎では15分間隔で運行されていた鉄道が廃止され、1時間に2本の路線バスに代わった。「2本しかない」と嘆く住民がいたが、「2本もある」と発想すれば、それに合わせた暮らし方ができ、自立できる。

 津屋崎で幼稚園の餅つきに参加して思ったのは、自動餅つき機は確かに便利だが、わいわいと手間をかけて準備するのは楽しいということだ。それが人生のスパイスであり、幸せではないか。便利さは早くできるだけで、私たちから随分と喜びを奪っているようだ。

飯干氏 連携し地元の魅力発掘

 飯干 民活(民間活力)に頼ることが難しい中山間地では、どうしても行政による“官活”が必要となる。五ケ瀬町長時代、「おれたちが地域づくりのきっかけをつくろう」と町職員を鼓舞した。その中で生まれたのが、桑野内地区の「夕日の里」。同地区はインフラ整備が町内で最も遅れていたが、そこで都市と農山村の交流をするグリーンツーリズムを仕掛けた。当初、「こんな場所に誰が来るのか」と言われたが、計9戸の農家民泊が評判を呼び、今では海外からの修学旅行客も多い。海外旅行業者に「なぜ夕日の里を選んだのか」と尋ねると「景色ではなく(住民の)心だ」と言われた。

 小規模自治体にはマンパワーや理論が足りない。そこは、NPOの方々や地元の大学と連携し、地域の将来を描いていくことだ。いま、各自治体の移住政策は特典合戦みたいになっているが、それは違う。地域の人が「この町が好きだ」と実感し、他の町の人にもそう思ってもらうことが本当の移住政策。そこを競ってほしい。

(続)

【地域再生座談会】(4)住民が愛する町にする

=2016/01/03付 西日本新聞朝刊=

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