【地域再生座談会2】地域づくり論ずるとき

西日本新聞

山下氏 行政依存加速に危機感

 -地方を再生するには地域の力が必要だ。

 山下 地域力はここ10~20年で大幅に低下したという意見が多い。ある自治体の総合計画づくりに携わったとき、職員が、最近の親は自分で子育てせず行政依存していると話していた。自治体は、保育料無償化など子育て支援を厚くして、若い人を呼び込もうとしているが、住民がそれを当然視するようになったというのだ。行政依存が強まれば、自ら問題解決しない。そうすればコミュニティー力、地域力、家族力がなくなり、人口再生産能力が減少する。日本の社会はそこに行き着いていないか。

 飯干 地方分権が進まないのは、自治体側に、自ら考えて解決する覚悟と力がないからだ。住民ができることは「やってください」と言うべきで、住民ができないことを行政が担うという役割分担を明確にすることだ。五ケ瀬町では、移住者が子どもに自然体験を学ばせるNPO法人を運営し、町は放課後子供教室を委託している。そこに雇用が生まれるし、彼は農業もやっている。1人そんな人がいるだけで人が集まり、地域が元気になる。

 山口 行政に求めるのは、お金ではなく信用。例えば空き家を改装して移住者に紹介する事業で、「家を貸してください」と頼んでも信用されないことがある。行政が広報してくれるなどすれば対応も変わる。建築基準法により取り組みが難しい古民家再生についても、一緒に制度設計を考えてくれるなどすればありがたいし、できることが増える。

川口氏 働く世代の流出が課題

 川口 対馬市島おこし協働隊として暮らす中で、仲間と、地域の資源を「見つける」「活(い)かす」「つなぐ」をコンセプトにして地域づくりに取り組む一般社団法人・MITをつくった。その取り組みは2階建て構造。1階部分では、地元で地域資源を使った産業をつくり、持続可能な暮らしを実践している。2階部分では、県や市の委託事業を受けている。スタッフにはコンサル経験者や学識経験者、デザイナーがいて、対馬市の総合計画を作成している。計画作成のためのお金が、東京のコンサルに流れず島にとどまるし、地域の生の声を反映した総合計画が低コストでできる。

 地方創生の議論で、人口増が目的化しているのに違和感がある。働く世代が地域にとどまらないのが問題だ。今年、母親になるが、待機児童など都会の課題は、ここにはない。農作物を作りながら子どもといれば、地域の方が来てくれ、地域全体が保育園になる。暮らしとお金を得る場所が一致しているのだ。だが、現代は多くの人が外に働きに出るしかない。かつては地元で働く人がコミュニティーのリーダーだったが、今は地域づくりの担い手が地域にとどまれない。

 飯干 自治体でプレミアム商品券の発行や、ふるさと納税のお礼の品を競い合っているが、それが本質だろうか。ふるさと納税をする人の中には、返礼ではなく「町の教育に生かして」という意識の方もいる。もっと自治体のありさまを競い合うべきだ。地域づくりとは何かという正論に戻るべきなのに、変なところで競争させられている。

 -地方都市の人口流出を止めるダム機能論や、高齢者の地方移住構想が提唱されている。

 山下 ダム論は、中央から見た発想。人口を増やしたところが、ゲームの勝者で、そこにお金を使うということになっている。だが、地域づくりで人が増えたのではなく、鉄道や道路の開通、住宅地開発で増えた所が多い。若者が多く一時的に出生率は上がるが、将来は人口増が止まり、高齢化が進む。郊外はある意味、人口が増えすぎたときの緩衝地。人口減少時代にはコンパクト化しないといけない。過疎地の集落と、郊外、都心部をどうバランス良く配置するのか。互いが共存しあえるのが重要。国には、そのとき、きちんとコントロールする制度づくりの責務がある。

(続)

【地域再生座談会】(3)豊かさの価値観見直す

=2016/01/03付 西日本新聞朝刊=

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