「ぶり奨学金」帰郷後押し ブリ販売、基金設け返済 鹿児島・長島町

西日本新聞

 ブリのように成長して故郷に-。鹿児島県長島町は若者のUターンを後押ししようと、地域ぐるみで奨学金の返済を肩代わりする「ぶり奨学金」を2016年4月から始める。卒業後に町に定住すれば、特産のブリの売り上げなどでつくる基金で返済金を全額負担する、全国でも珍しい取り組みだ。若者の地元定着を狙った奨学金の減免制度は人口減少に悩む自治体で広がりつつある。

 大小23の島々からなる長島町は漁業の町。町内の東町漁協は養殖ブリの出荷量日本一を誇る。出世魚で回遊魚でもあるブリにちなみ、町外で故郷の活性化を担う人材に成長し、帰ってきてもらおうと「ぶり奨学金」と名付けた。

 町は人口減に苦しむ。2006年の合併以降、人口は約1400人減って1万944人(今年11月末)。04年に町唯一の高校が閉校し、高校進学後に町外で寮生活する子どもも多く、15~19歳人口は年間50人ペースで減少する。

 奨学金は鹿児島相互信用金庫(鹿児島市)が高校生に月3万円、専門学生、大学生に月5万円を貸与する。返済期間は10年間だが、卒業後にUターンした場合は町内に在住している間、町が来年度に設立する基金で返済額を負担する。基金は町の一般財源と寄付でまかなう。東町漁協は販売したブリ1匹当たり1円を寄付し、年間約250万円を見込む。地元商工会にも寄付を呼び掛け、ふるさと納税の活用も検討する。

 3人の子どもがいるブリ養殖業の植元勇蔵さん(44)は「地域を盛り上げる人材に島の外で育って、戻ってきてくれれば、寄付を担う父としても仕事に張り合いが出る」と笑う。発案した井上貴至副町長(30)は「行政だけでなく、島全体で若者を育てることで息の長い制度になる」と話す。

    ◇      ◇

 大分県臼杵市は10年、大学卒業後の10年間のうち5年間、継続的に市内に住めば、奨学金の返済を全額免除する制度をスタート。これまでの奨学生23人のうち、10人が卒業し、4人は地元に住む。担当者は「地元定着の一定の動機づけになっている」とみる。

 11年から地元就職を条件に奨学金返済を一部免除する香川県は今年から、県内の大学に進学する県出身者の貸与額と免除額を増額した。調査で県内大卒の8割が地元で暮らしていることが判明したからだ。県政策課は「大学選びの段階で、若者を囲い込む必要がある」という。

 東京一極集中の是正を掲げる国も来年度、奨学金減免への財政支援に乗り出す。自治体と地元企業が出資し、返済金を負担する基金をつくれば、自治体側の出資額の半額を交付税で補填(ほてん)する。地元の基幹産業などに就職する学生向けの奨学金制度が対象で、既に鳥取県や山口県がこれを活用する制度を導入、奨学生の募集を始めた。

 九州では、福岡県田川市が活用を検討中。20代の人口が年間110人も減り続けており「奨学金の減免だけで若者をつなぎ留めるのは困難。学生に選ばれる企業づくりも重要」(担当者)として、市内の県立大と連携した産業育成も進める。

=2015/12/27付 西日本新聞朝刊=

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