18歳オトナですか<5>選挙権引き下げ「普通」 不勉強な1票には疑問

西日本新聞

 心は女性、体は男性。母はフィリピン人、父は日本人。それでもレニーさんは揺れ動かない。

 性同一性障害。通っている九州北部の高校では、途中で性別の変更が認められた。着替えもトイレも女子用を使う。入学時に購入した制服だけは「もったいない」との理由で男子用を着ている。

 オトナですか?と問うと「子どもです」。親元を離れ、親の手を借りずに食べていけるようにならないと。「あと、親に恩返しできる力がついたら」。設定は高い。

 10歳までは母の母国で暮らしていた。当時から心は女の子だったが、不自由は感じなかった。「オープンな人が多いから」。日本でも今の環境には感謝する。ただ、社会に出たらどうだろうか。

 卒業後は東京に出てニューハーフの店で働くつもりだ。「“普通の所”に就職しても差別されて、すぐに辞めちゃう人が多いって聞く」。それよりまずはお金をためて、将来は起業も視野に入れる。その前に、性別適合手術を受けたい。「貯金してチョッキン、そしてまた貯金」と屈託ない。

 ちなみにフィリピンの選挙権は18歳以上。日本の年齢引き下げにも「私の中ではむしろ普通」と受け止める。一方で「いきなり出てきた話」との印象も強い。「小学生から選挙の勉強をさせてあげないと、誰に投票していいか分からない」。納得の提言である。

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 「勉強して選挙について考えることができる人の1票が、仕組みも理解してない人が適当に入れる1票に負けたら、納得できない」

 「1票の価値」に一家言を持つ高校3年のトモ君。自分は前者だと思っている。一緒にいた同級生の「政治に触れる授業をもっと増やせばいいのに」という意見にもうなずいた。

 オトナですか?と声を掛けたのは、元日のJR博多駅前、模擬試験の帰りだった。過労で倒れた祖父が脳梗塞の後遺症に苦しむ姿を見て、産業医を目指している。

 今でこそ受験に全力を注げているが、高校2年の秋から冬にかけては「灰みたいな生活」だった。原因は失恋。気力が湧かず、勉強に身が入らなかった。

 立ち直れたのは「逃げずに立ち向かおう」と叱咤(しった)してくれる担任がいたから。それに、共働きで忙しい合間にも相談事をよく聞いてくれる両親も「信頼している」。そんな大人たちに囲まれて育った今の自分に「満足している」。

 その隣で同級生が「僕は後悔ばかりです」。中学時代に告白した女子と同じ高校に入れず、進学後に通学路でばったり会ったとき、下を向いた。甘酸っぱい思い出を共有する2人は「お互いに頑張ろうぜ」と励まし合ってきた。

 ところで、オトナですか?の答えは…。ちょっと考えて「定義は難しい」。大人と子どもの間で揺れ動きながら前を向く。頑張ろうぜ。

=2016/01/06付 西日本新聞朝刊=

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