学生「仕事と子育て」体験 共働き世帯で将来イメージ

西日本新聞

 大学生が子育てを体験する取り組みが広がっている。共働き家庭を訪れて実態を知ることで、就職する前から、仕事と子育ての両立や将来のライフプランについて考えようという取り組みだ。少子化対策としても注目を集めている。

 2月初旬の日曜日。慶応大3年の小山田珠理さん(21)は、東京都台東区の近藤岳史さん(34)、妻の菜採(なつみ)さん(35)の家を訪れていた。「もう少しで終わるから泣かないで」。9カ月になる近藤家の長男慶弦(けいと)ちゃんに話し掛けながら、岳史さんの手を借りて、ぎこちない手つきでおむつを替えると、ほっとした表情を見せた。

 子育て中の共働き世帯を大学生が訪れる「家族留学」。就職活動を間近に控えた小山田さんは「グローバルに働きたいけれど、家庭との両立イメージが描けない」と感じて参加した。大手メーカー勤務で4月に育休から復帰する菜採さんは、最初は家事や育児の分担で夫とけんかしたことや、育休中に成長したいと英語の勉強をしていることなどを語った。

 菜採さんは「女性は、キャリアを積む時期と出産の時期が重なる。長期的な人生設計を考えてほしいから、困難や喜びを次世代に伝えたい」と、学生の受け入れをしているという。

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 家族留学は、関東の学生団体「manma」(マンマ)が1年前に始めた。代表の同大3年、新居日南恵(におりひなえ)さん(21)は「学校のキャリア教育では、結婚や出産の視点が抜け落ちている。実際に体験して学ぶ機会をつくりたかった」と話す。学生も受け入れ先も無償。1日単位で、丸一日過ごすケースが多く、これまでに男子も含め約100人の学生が参加したという。

 結婚後も働く女性が増えてきているものの、いまだに第1子出産前後に離職する女性は6割に上る。厚生労働省が2013年に実施した若者の意識調査によると、15~39歳の独身女性の3人に1人が、結婚後に専業主婦になることを希望している。

 メンバーの同大2年尾郷彩葉(いろは)さん(20)=福岡市出身=は「母親が専業主婦だったため、両立がイメージできない学生は多い」と話す。「ロールモデルを知ることで視野が広がる。今後は九州にも活動を広げたい」と意気込む。

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 新宿区のベンチャー企業「スリール」(堀江敦子社長)は、10年から学生にインターンシップ先として子育て家庭を紹介する「ワーク&ライフ・インターン」に取り組む。

 学生は36時間の研修を受け、4カ月間にわたって月に6回、2人一組で担当する家庭で子どもを預かる。3~4時間の預かり時間中は、保育園のお迎えや食事の世話、遊び相手などをして過ごし、親が帰宅後は子育てや仕事の話を聞く。家庭には子育てサポート、大学生にはキャリア教育を提供する仕組みだ。これまでに約480人の学生が参加したという。

 昨夏、インターンに参加した明治学院大3年の矢代雄也さん(22)は、連日深夜まで働き、家事や育児は妻に任せきりだった父親を見てきて、将来「イクメン」になった自分が想像できなかった。今は「子育ても仕事も2人で一緒にやっていく、パートナーとの生活をリアルに描けるようになった」と話す。

 同社で学生と家庭のマッチングを担当する間瀬友里恵さん(27)は、「専業主婦になるのも、結婚せずに働くのもすばらしいと思う。ただ、若いうちにいろんな選択肢があることを知った上で人生を歩んでほしい」と話している。


=2016/02/16付 西日本新聞朝刊=

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