重度障害児 在宅の支えに 熊本のNPO 訪問看護など10年 家族の日常やノウハウ 本に

西日本新聞

 おうちで親子が笑って過ごしてほしい-。重い障害児と自宅で暮らす家族を支えようと、全国的にも珍しい病院での「在宅移行支援」や子ども専門の訪問看護に取り組む熊本県合志市のNPO法人「NEXTEP(ネクステップ)」(理事長・島津智之医師)が、約10年にわたる活動をまとめた本「スマイル」を発行した=写真。これまでスタッフたちが見守ってきた家族の日常を紹介したほか、在宅サービスの手法から心構えまで分かりやすく解説。医療や看護関係者ら「支え手」も必読の一冊だ。

 生まれつきの障害や病気だったり、事故に遭ったり。何らかの原因で24時間の看護や介護が必要な子どもたちは、少なくない。自宅での暮らしを望む親たちが増えている半面、子どもが新生児集中治療室(NICU)を退院した直後から、家で痰(たん)の吸引や胃ろうでの栄養注入など、医療のプロ並みのケアを一手に引き受けることになり、不安や負担を抱えたままの人もいる。

 島津さん(39)は小児科医として勤務する熊本再春荘病院(同市)の理解と協力を得て2006年、在宅移行支援(中間移行支援)を九州で初めてスタートした。NICUから自宅に帰る前の子どもに“予行練習”として3~4カ月程度、入院してもらい、親が慣れない手技を練習したり、一緒に病棟に泊まったりしてケアに慣れてもらう試みだ。その後、ネクステップとして小児専門の訪問看護ステーションを立ち上げ、在宅移行支援の段階から看護師が親子をサポートし、在宅生活につなげる取り組みも確立させた。

 本書で主に紹介されるのは5家族。ある母親はネクステップが本格的にサービスを始める以前から島津さんらとかかわり、今は娘を亡くしても、娘の友達家族と交流を続ける。訪問看護師を、ただ手技を教えてくれるだけでなく「誰にも相談できなかった子育ての悩みについて、泣きながら弱音を吐ける存在」としみじみ語る母親。染色体異常で1年しか生きられないと診断されたにもかかわらず家族と自宅で暮らし、5歳を超えた「ななちゃん」…。それぞれの暮らしぶりや、スタッフを交えた日常が描かれる。

 家族のストーリーの合間に、島津さんや訪問看護師のコラムも掲載。ネクステップがこうしたサービスに乗り出した経緯のほか、訪問看護や在宅移行支援の具体的な内容や制度、流れ、進め方も詳しく記した。

 ホームヘルパーなどの介護サービスや特別支援学校とのかかわりなど、医療とは異なる福祉、教育、そして地域との連携の在り方も指摘。九州でも小児専門の訪問看護ステーションなどが少しずつ増える一方、枠を超えた支援が広がっているとは言い難く、参入を考える事業者側にも大いに参考になりそうだ。

 「これまでに出会った子どもたちが活動の原動力」と島津さん。「思いがある人が力を合わせて、いつかすべての子どもたちが笑顔でいられる温かい地域社会をつくりたい」と話す。

 「スマイル」は四六判、196ページ。1600円(税抜き)。発行はクリエイツかもがわ(京都市)。ネクステップは賛助会員も募集中。年間一口3千円。問い合わせはネクステップ事務局=096(227)9001。


=2016/02/25付 西日本新聞朝刊=

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