教員が痰吸引 危険? 増える気管切開児 どう対応 九州5県で認めず 保護者「個別に判断して」

西日本新聞

 気管切開して在宅で暮らす障害児が増える中、特別支援学校の教員に気管切開して管(カニューレ)を着けた子どもの痰(たん)吸引を認めているのは、九州7県の教育委員会のうち2県にとどまることが分かった。国は法改正などによって教員も実施可能な行為と位置付けているが、認めていない県教委は「衛生管理に注意が必要で、気管を傷つける恐れもある」と安全面の懸念を理由に挙げる。専門家は「子どもの状態によって安全性は異なり、教委が一律に対応を狭めるべきではない」と指摘している。

 痰吸引は、自力で痰を出せない人に対して、口や鼻などに管を入れて機械で吸い出す医療的ケアの一つ。原則、医師や看護師にしか認められておらず、特別支援学校では長い間、親か看護師に限られてきたが、2012年度の法改正で、一定の研修などを受けた教員も(1)口腔(こうくう)内(2)鼻腔(びくう)内(3)気管カニューレ内部-の3種類の痰吸引が可能となった。

 文部科学省によると、痰吸引が必要な児童生徒は年々増え、カニューレ内の吸引が必要な子は13年度2844人。6年間でほぼ倍増し、九州では福岡56人▽佐賀32人▽熊本51人▽長崎、宮崎各25人▽大分21人▽鹿児島44人-いる。

 厚生労働省はカニューレ内の吸引について「教員でも一定条件下なら安全性に問題はない」とするが、九州の7県教委では、3種類の痰吸引全てを教員に認めていない佐賀をはじめ、福岡、長崎、熊本、宮崎も「看護師のみの実施」と規定。教員にも認めているのは、鹿児島、大分だけだった。

 看護師にしか認めていない県では、学校配置の看護師が休んだ場合、保護者が付き添いを余儀なくされるケースもあるという。学校現場の医療的ケアに詳しい下川和洋地域ケアさぽーと研究所理事は「気管切開しているため、通学をあきらめる親もいる」と指摘する。中学生の息子がカニューレを着けている福岡県の40代母親は「カニューレの種類によっては装着していない人より吸引しやすい場合もある。一律に線を引かれると保護者の選択肢が狭まってしまう」と懸念する。

 福岡県教委は「現状では看護師による対応で足りている。来年度以降、変更すべきか検討したい」。熊本県教委は「将来、カニューレの子どもが大幅に増えた場合は、保護者の要望があれば教員による実施を検討したい」としている。

 福岡女学院大の猪狩恵美子教授(障害児教育)は「学校での医療的ケアは、関わる人を増やして子どもの世界を広げ、保護者の負担を減らすことが目的。主治医と保護者に判断を委ねるべきだ」と話す。

 =2014/04/29付 西日本新聞朝刊=

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