医療不信募る訳は... 

西日本新聞

 福岡市東区の女性(81)が4月末、糖尿病性腎症を患って人工透析を受けている夫(81)について「A医師から医療ミスを受けた」と訴えてきた。取材してみると、A医師の対応に「不可解さ」を感じることがあった。

 「医療ミス」とは、夫の透析を担当するA医師が、夫の左足親指の爪を1月に切ったとき、指を傷つけて化膿(かのう)させ、指切断を余儀なくされたというものだ。

 夫の爪は変形していて女性が切るのは難しく、女性の依頼でA医師が爪切りを引き受けたのだった。切断まで至ったのは、糖尿病による血行障害が進んでいたことが一因とみられる。

 女性は「爪を切り過ぎて下の肉を露出させ、出血させた」と主張。これに対してA医師は「爪の切り方は適切だった」と反論する。

 夫が左足親指の切断手術を受けたのは3月27日。A医師が所属する病院に前日から入院した上で、整形外科のB医師が手術を担当した。それから1カ月半余りが過ぎた今も夫は入院中で、B医師が主治医を務め続けている。

 A医師は、夫の入院・手術を知っていたが、入院中の夫を訪ねることはなく、初めて足を運んだのは、私が取材に入った直後の5月1日。女性は「A医師は謝罪もなければ見舞いにも来ないので、ハートのない人と思った」と話す。

 そして「不可解」なのはその数日後、A医師が夫の転院を女性に促したことだ。転院が必要なら、それを家族に話すのは通常、主治医であるB医師のはずだが、A医師が出しゃばった形だ。B医師はこの転院話を「メリットが不透明」と承諾せず、女性も「夫は弱っており、転院は危険」と拒絶。転院話は立ち消えとなった。

 A医師は転院を促した理由について「転院先には、うちの病院にはいない血管外科の専門医がいるから」などと説明するが、女性は「厄介払いをしたかったのではないか」と不信を募らせる。

 医療行為で問題が起きたとき、医師側がミスはなかったと確信していても、その後の対応次第では患者や家族を医療不信に陥らせ、苦しめてしまう‐。A医師がそのことをわきまえていれば今回のような「対立」が生じることはなかったはずだ。=2014/05/16付 西日本新聞朝刊=

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