精神科長期入院 地域差なぜ?

西日本新聞

 「うつに非(あら)ず

 うつ病の真実と精神医療の罪」という本を書き、精神科医療の問題点を訴えている京都市の精神科医、野田正彰さん(70)。彼については昨年、熊本市で講演した時に取材し、このコラムで紹介した。5月、今度は鹿児島市で講演するというので聴きにいった。すると冒頭から「鹿児島の人はあまりにも気の毒」「鹿児島は信じられないような県」と憤りがこもる発言を繰り出していた。

 憤りの理由は何か。野田さんがまず挙げたのが、精神科病床の平均在院日数。厚生労働省の2012年の病院報告によると、全国平均が291・9日だったのに対し、鹿児島県は418・6日。都道府県別で最長の徳島県(424・4日)に次ぐ長さだ。

 野田さんは「鹿児島は、病院に閉じ込められる日にちが全国の1・4倍もある。大変なことだ」と強調。「その数字の陰には、良くなる人も慢性的な患者にさせられていく事実がある。薬漬けになって慢性化する比率が他県より高いはずだ」と訴えた。

 鹿児島県は精神科病床への入院患者数が多く、都道府県別で最多であることも問題視。同報告によると、人口10万人当たりの1日平均在院患者数は534・9人で、全国平均238・3人の倍以上だ。

 つまり鹿児島県は他の地域に比べ、大勢の人を長期に精神科病院に入院させているわけで、野田さんは「私は許せない」と語気を強めていた。

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 厚労省の11年患者調査(宮城県の一部と福島県は入っていない)によると、日本では統合失調症や気分障害、認知症などの精神疾患患者32万3千人が入院。うち1年以上の長期入院患者は20万人以上で、10年以上でも6万5千人に上る。入院の必要がないのに居場所がないため「社会的入院」している例が多数あるとみられる。

 そもそも日本は「精神科病院大国」といえる。精神科病床数が世界的に見ても群を抜いて多いからだ。平均在院日数も先進国の大半は50日以内。日本のように300日に迫るような国は見当たらない。

 野田さんも講演で「日本の精神科医療は諸外国に比べてあまりにも不幸」と指摘。不幸な日本の中でさらに不幸なのが鹿児島というわけか。

 この事態を鹿児島県の医療行政も問題と受け止めている。13~17年度の県保健医療計画に「本県の精神科病院の平均在院日数は400日を超えており、全国平均を大きく上回っています。社会的入院の解消に向けて、地域移行を促進するとともに地域定着支援の充実を図る必要があります」と明記。さらに「精神科病院の1年未満入院者の平均退院率は66・4%であり、全国平均の71・4%より低いことから、統合失調症、認知症患者等の早期退院に向けた取り組みの充実を図る必要があります」と掲げている。

 精神科病床に長期入院する人たちが地域で生活できるようにするには、どうしたらいいのか。厚労省も有識者検討会を設けて対策を探っているが、鹿児島県が全国で最もこの問題改善に力を入れて成果を上げることを期待したい。=2014/06/27付 西日本新聞朝刊=

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