指定難病「HAM」 細胞変質の仕組み解明 聖マリアンナ医大

西日本新聞 坂本 信博

 九州に感染者が多いウイルスHTLV1が健康な細胞を病原性細胞に変質させ、厚生労働省の指定難病「脊髄症(HAM)」を引き起こす仕組みを、聖マリアンナ医科大の山野嘉久准教授(神経内科)のグループが突き止めた。24日付の米科学誌ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーションに論文を発表した。

 山野准教授によると、HTLV1は人体の免疫反応を制御する善玉T細胞(リンパ球)に主に感染し、細胞内にTaxというタンパク質を作り出す。このTaxがT-betという遺伝子に作用することで(1)リンパ球が悪玉T細胞(病原性細胞)に変わり、HAMを発症(2)脊髄の炎症を増幅させるインターフェロン〓(ガンマ)というタンパク質が急増-する。

 HAM患者の髄液を解析すると、T細胞の7割以上が病原性細胞だった。これまでに病原性細胞が発生した後に症状が進行する仕組みは解明していたが、研究が進んだことで、より根本的な治療が期待できる。

 一方、HAMと同じくHTLV1が原因で起きる難治性血液がん・成人T細胞白血病(ATL)用の新薬「抗CCR4抗体KW-0761」が病原性細胞をほぼ死滅させ、インターフェロン〓を減らすことも確認できた。山野准教授らはこの新薬をHAM患者に投与する臨床試験中で、今のところ重篤な副作用はないという。

 山野准教授は「HAMのメカニズムを分子レベルで解明できたことで、新薬の有望性を立証できた」と話している。

 ▼HTLV1関連脊髄症(HAM)

 主に母乳を介して母子感染し、国内感染者が推計100万人を超えるウイルスHTLV1が、血液中のリンパ球に感染して脊髄に慢性の炎症を起こす神経難病。つえや車椅子が必要になる下半身まひと排尿・排便障害が主症状で、進行すると寝たきりになる。疫学調査によると、発症した国内患者数は推定約3千人で半数が九州に在住。かつては九州の風土病と誤解されていた。

 ※〓はすべて「ガンマ」=2014/06/25付 西日本新聞朝刊=

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