うつ病学会 肝心の研究は?

西日本新聞

 医師にうつ病と診断されて、抗うつ剤を処方されたとき、そのまま信じて薬を飲んでも大丈夫なのか‐。

 私はこれまでの取材でそんな不信を持つが、広島市で7月中旬に開かれた日本うつ病学会総会を取材して、その不信が強まった。

 というのは、会場で購入した各発表の抄録集に、不信を裏付ける発言が多数記載されていたからだ。

 ■

 ■

 例えば、総会会長を務めた山脇成人・広島大大学院教授の会長講演の抄録には「うつ病医療不信の最大の要因は、うつ病の客観的診断基準や検査法がいまだ存在しないことである」とあった。多くの医師が患者の症状だけで、うつ病かどうかを診断し、そこに主観が入り込むために誤診の例も多いとされる現状を意識しての発言に違いない。

 山脇会長講演の抄録には「機械的に抗うつ薬が処方される傾向が強くなった」や「客観的診断法がない現状では治療ガイドラインを参考にして試行錯誤を繰り返すしかない」とも。そして「うつ病の病因解明とそれに基づく客観的診断法や治療法を確立することが精神科医の使命であり、それが患者、家族を含む国民からの信頼を得る唯一の方法ではなかろうか」と結ばれていた。

 ほかの発表者の抄録にも「うつ病の客観的診断法が未開発」や「うつ病の診断は難しい。(うつ病を含む)気分障害の診療にプライマリーケア医師の関与が必要な現状を考えれば、相当数の過少診断と過剰診断が横行していると想定せざるをえない」などとあった。

 直接聞いた発表の中でも私の不信を固めるものがあった。

 理化学研究所脳科学総合研究センターの加藤忠史さんによる「うつ病のモデル動物とは」。うつ病の診断法・治療法の開発に欠かせないとする「動物モデル」について「うつ病のモデル動物とされているものはほとんどストレスのモデルだが、ストレス=うつ病でない」と指摘し「今後はより臨床に即した動物モデルが求められるはず」と強調した。基礎研究さえ、まだまだのようだ。

 ■

 ■

 2004年発足の日本うつ病学会は、うつ病に関するさまざまな問題を研究する学術団体。理事長は尾崎紀夫・名古屋大大学院教授で、理事には九州大学長に10月に就任予定の久保千春・前九州大病院長や、皇太子妃雅子さまの治療に当たっている大野裕・国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター長らが名を連ねる。正会員は医師ら約1500人だ。

 2日間あった総会も7会場を設けてセミナー、シンポジウム、ワークショップなどを多数開催し、1200人近くが参加。市民公開講座も用意して、約460人を集めた。

 この学会に「権威」の雰囲気はあるが、肝心のうつ病研究はこれからの様子。研究推進を期待したい。

 =2014/08/01付 西日本新聞朝刊=

PR

医療・健康 アクセスランキング

PR

注目のテーマ