認知症への偏見根強く

西日本新聞

 「認知症のわけが分からない人と共存なんてできない。向こう側に窓があれば目があったり、音がしたりする。気持ちが悪い」

 「痴呆(ちほう)の人は山の方に行ったらいいのよ。この地区は静かな町。叫ばれたり、散歩されたりしたらかなわない」

 「土地の価格が下がるのではないか」...。

 認知症のお年寄りが少人数で介護スタッフとともに共同生活するグループホーム。その開設を九州の住宅地で計画する法人が、設置予定地付近の住民たちに計画の事前説明をするとこんな声が寄せられたという。

 認知症への理解が乏しかったとされる「昔」の話かと思い、法人関係者に確認すると、関係者は「今年に入ってのことです」。そして「話し合いを重ねた結果、最終的には理解していただいたのですが、認知症への偏見がまだまだあることに戸惑いました」と話していた。

 こうした認知症への厳しい視線は、この法人の件に限ったことではないようだ。福岡市には認知症グループホームが111カ所(定員約1740人)開設しているが、市によると事業者の事前説明(2013年度以降)に対し、住民側から「認知症の施設ができることでマンションの入居率が下がる」「雰囲気(高級住宅地)にふさわしくない」などの声もあったという。

 大久保治郎・市高齢者サービス支援課長は「認知症グループホームの影響でマンションの入居率や地価が下がったというような話は聞いたことがない」と強調。「グループホームの認知症の人たちが地域の住民に迷惑をかけて大きなトラブルになったというような事例も把握していない」と語り、認知症への理解を求めている。

 認知症の人たちはかつて「非人間的な扱い」を当たり前のように受けてきた。例えば、鍵付きの空間に閉じ込められ、隔離された。手足を縛られ、動くことができないようにもされた。向精神薬を飲まされて動きを抑えられた人もいた...。そんな「ひどい歴史」が繰り返されるようなことがあっていいのか。認知症の人に抵抗を感じる人はどうか、まず、自身もこの病気を患う可能性があることを自覚してほしいと思う。=2014/08/29付 西日本新聞朝刊=

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