水俣病初の治療薬 臨床へ 環境省国水研 しびれ軽減に効果

西日本新聞

 環境省国立水俣病総合研究センター(国水研、熊本県水俣市)は、くも膜下出血の治療薬が、メチル水銀の影響を受けた水俣病特有の感覚障害(手足のしびれ)の軽減に効果があることを動物実験で確認した。水俣病の症状緩和はリハビリが中心で、根本的な治療法はなかった。今後、患者で臨床試験を行い、安全性などが確認できれば、症状改善への応用が期待できるとしている。

 この薬は、くも膜下出血の脳血管治療薬として既に実用化され、緑内障の治療薬として治験中の「酵素阻害剤」。国水研毒性病態研究室の藤村成剛室長(神経薬理学)が効果を確認した。環境省は来年度予算の概算要求に「治療法の研究」として2300万円を盛り込んでおり、薬の臨床試験にも充てる方針。

 藤村室長によると、人が身体を動かす場合、神経細胞の一部(神経線維)が伸びることで筋肉に信号を伝えるが、メチル水銀は神経線維を伸ばす働きがあるタンパク質を抑制するため、神経線維が収縮する。メチル水銀の影響が深刻化すれば、神経細胞自体がダメージを受け、感覚障害や歩行困難といった水俣病特有の症状が出るという。

 藤村室長は、酵素阻害剤が神経線維を収縮させる別のタンパク質の働きを抑制することに着目。メチル水銀を与えたラットに投与したところ、水銀の毒性で損傷を受ける末梢(まっしょう)神経の神経線維が、ほとんどダメージを受けなかった。ラットの培養細胞では、脳の中枢神経にも有効だった。

 このため、比較的軽症の水俣病患者のほか、水俣病被害者救済法に基づく救済対象者で、手足のしびれなどの感覚障害がある人に有効とみられるという。

 藤村室長は「薬とリハビリを組み合わせることで症状改善の効果が高まることが期待される。水銀汚染が深刻な新興国の被害者にも役立てるだろう」と話している。今後、臨床試験への協力者を募る方針。

 多くの水俣病患者の診察経験がある潤和会記念病院(宮崎市)の鶴田和仁院長(神経内科)は「研究は評価できる。末梢神経だけではなく、中枢神経での改善効果についての実験を重ねる必要がある」と話している。=2014/09/07付 西日本新聞朝刊=

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