医師が落語「患者に笑いを」

西日本新聞

 17日夜7時前、九州がんセンター(福岡市南区)の2階会議室で開かれた「寄席」。にわか仕立ての高座に、出ばやしとともに登場したのは福岡素人落語会会長の杉本理恵さん(51)だった。

 着物に帯、足袋などを身に着けて出演。扇子と手ぬぐいの小道具もきちんと用意して古典落語の「鈴ケ森」、新作落語の「動物園」を絶妙の語りと動作で披露。集まった入院患者ら約50人を笑いの渦に巻き込んでいた。

 まるでプロの落語家のような杉本さんの本職は、この病院の消化器肝胆膵内科医長。肝臓がんが専門の医師で、この日の寄席ではこんなこともおっしゃっていた。

 「動物園」の枕(前置き)では-。「笑うちゅうことはとても体にええですねぇ。ちょっと専門的な話をさせてくださいね。NK細胞ちゅうてね、笑うと、この細胞が元気になるんですねぇ。NK細胞ちゅうのはがんを殺す細胞なんです。ですから、皆さんが笑えば笑うほど、体の中でどんどんどんどん、がんが死んでいくんですね」

 「動物園」が終わって-。「しっかり笑っていただいて、がん細胞を殺しましたかねぇ~。皆さんのご全快をお祈りいたしております」

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 父親が落語を聞くのが好きだったことから、自身も小学生のときから落語に親しんだ。九州大学医学部に進んで、九大落語研究会に所属。卒業して医師になっても落語を愛し、九州の各大学の落研OBらでつくる福岡素人落語会に約15年前に入会し、発表会などの活動を続けている。

 今回の九州がんセンターでの寄席も、杉本さん自らが企画。外出が難しい入院患者らに楽しんでもらえればと、自身が九州がんセンターに着任した2009年から年2回のペースで続けている。この寄席には、福岡素人落語会の仲間数人にも協力してもらい、一緒に交代で落語を披露している。17日に加勢した同会事務局長の高田康治さん(49)は「医療だけでなく、落語でも患者さんを支えようとしている杉本さんをすごいなと思うので、協力しています」と話す。

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 この日の寄席は杉本さんが2席、高田さんが1席演じて計約50分で終了。入院患者らは会場を出るとき「おもしろかった」と口にしたり、杉本さんと握手したりしていた。

 杉本さんは、九州がんセンターでの寄席に関して「闘病中のがん患者さんであっても、生活を楽しんでもらいたいとの思いでやっています。笑うことが体にもいいのだ、という話をすれば、患者さんは、笑いをより大切にしてくれるはず」と話す。この寄席、入院患者から回数を増やしてほしいとの要望が強く、今後は年3回にしていくという。

 =2014/11/28付 西日本新聞朝刊=

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