「ATLに効く」新抗体 宮崎大教授らグループ開発 ヒト由来、副作用少なく

西日本新聞 坂本 信博

 ●膵臓がんなどへの応用期待

 国内感染者が推計100万人超のウイルスHTLV1が原因で、九州に患者が多い難治性血液がん・成人T細胞白血病(ATL)について、宮崎大学医学部の森下和広教授(腫瘍生化学)らの研究グループが、高い確率でがん細胞を死滅させる効果がある抗体の開発に成功した。この抗体を医薬品に応用すれば、重篤な副作用が生じる恐れは低い上、他のがんへの応用も期待できるという。来年1月から独立行政法人・科学技術振興機構が最大10億円の研究費を支援。薬事承認のための治験を経て数年後の実用化を目指す。

 抗体は体内に侵入した異物を攻撃排除するタンパク質の一種。森下教授らは、ATLなど従来の医薬品が効きにくい難治性の白血病では、血液中の鉄分を細胞内に取り込む役割を果たすタンパク質「トランスフェリン受容体」(TfR)が細胞膜の表面に多く現れることを発見。TfRを狙い撃ち、鉄分の供給を断つことでがん細胞の生存や増殖を阻む「抗トランスフェリンレセプター抗体」を、医薬品ベンチャー企業のペルセウスプロテオミクス(東京)と共同で開発した。

 新抗体はヒトの遺伝子を使って作製する。このため医薬品として人体に投与しても異物として認識されにくく、副作用が少ないとみられる。ATLと同じように鉄の代謝がおかしくなる他の白血病や口腔(こうくう)がん、膵臓(すいぞう)がんなどにも「有効な治療薬となる可能性がある」(森下教授)という。

 動物実験では、がん細胞を死滅させる効果や、重い副作用がないことを確認済み。今後は、治療薬としての有効性や安全性、薬効を確認した上で、ATL患者20~30人に投与する治験を2017年度から始める。新薬承認の審査期間を短縮する「希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)」に指定される可能性が高い。

 ATLは主に母乳を介して母子感染するウイルスが原因。感染者の約5%が発症し、毎年約千人が死亡している。治療薬としては12年に発売された「ポテリジオ」があるが、治療の効果があった患者の割合を示す奏功率は約50%とされており、森下教授は「動物実験の結果などから、より高い奏功率が期待できる」としている。

 ●途上国への貢献にも望み

 ▼日本HTLV-1学会理事長の渡辺俊樹・東京大学大学院教授(血液腫瘍学)の話

 先行する新薬「ポテリジオ」は夢の特効薬というわけではなく、限界もみえている。新しい抗体医薬の実用化で治療法の選択肢が増えるとすれば素晴らしいことだ。HTLV1感染者は発展途上国を中心に世界で2千万~3千万人に上るという推計もあり、新薬開発は国際貢献につながる。他のがん治療への波及効果も期待できる。=2014/12/28付 西日本新聞朝刊=

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