心筋梗塞の進行阻止へ 久留米大グループ 生体防御 仕組み解明 応急処置、新薬期待

西日本新聞

 急性心筋梗塞によって進行する心筋の壊死(えし)を食い止める体内メカニズムを久留米大循環器病研究所(福本義弘所長)の研究グループが解明した。四肢の一部を圧迫して血流を短時間遮断することで腎臓の神経が刺激され、造血ホルモンが増えて心筋の壊死が軽減されるという。対処の遅れが死に直結するとされる急性心筋梗塞の応急処置や、新薬開発につながる発見として注目される。日本循環器学会誌オンライン版に公開した。

 急性心筋梗塞は、心臓の冠動脈に血栓が詰まり、血流が遮断されて心臓の筋肉が壊死する疾患。厚生労働省の統計によると、心疾患による2013年の死者数は年間19万6723人で、死因別ではがんに次ぐ2位。このうち急性心筋梗塞が約20%を占める。一般的に、カテーテル治療や血管バイパス手術が行われているが、発症から数時間で心筋の3~4割が壊死して死亡率が急上昇するため、早期の治療が不可欠とされる。

 グループは、下肢を縛って血流を遮断し、虚血(局所の貧血)状態にしたマウスを使い、人為的に心筋梗塞を発症させた。すると、数分後に腎臓の血流が低下。それに伴い、腎臓で作られる造血ホルモン「エリスロポイエチン」の血中濃度が通常の約2倍に増えて心筋を保護し、壊死が軽減された。

 人の場合も、上腕を短時間虚血すると、エリスロポイエチンの血中濃度が上昇した。安川秀雄准教授(心臓血管内科)によると、これは虚血という体の異常を察知した脳が、心臓を守るために腎神経に指示を出す「生体防御のメカニズム」で、一連の流れが明らかになったのは初めてという。

 虚血は腕でなくとも体の一部であれば同じ効果があり、研究担当者の大場豊治助教は「手術前の応急処置や、後遺症を最小限に抑える手段になりうる。腎臓に働きかける新薬の開発にもつなげたい」と話している。

 ●高齢者の治療に有効性

 ▼新潟大大学院医歯学総合研究科・南野徹教授(循環器内科学)の話

 上腕の虚血と心筋保護に関係があることなどは現象としては知られていたが、腎神経の働きなど一連のメカニズムとして解明されたのは画期的だ。四肢の虚血は比較的リスクが小さく、高齢者の治療などへの有効性が期待できる。=2015/05/02付 西日本新聞朝刊=

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