油症多発地域 高い病死率 長崎・五島、広島大など調査 68、69年 カネミ被害 「より深刻な可能性」

西日本新聞

 1968年発生の食品公害、カネミ油症事件の原因物質であるダイオキシン類(ポリ塩化ジベンゾフラン=PCDF)などの摂取をきっかけにして、亡くなった人が相当数いた可能性があることが広島大の鹿嶋小緒里(さおり)助教(公衆衛生学)らの研究で分かった。鹿嶋氏の研究チームは被害が集中する長崎県の2地区と長崎県全体の事件発生当時の病気の死亡率を比べ、2地区が高いことを突き止めた。研究は、油症のダメージがこれまで指摘されてきた以上に深刻であることを示唆しており、被害実態を再考する契機になりそうだ。

 鹿嶋氏らは、原因企業カネミ倉庫(北九州市)製造の米ぬか油が多く流通し、長崎県内の認定患者の9割を占め被害傾向が見極めやすい同県玉之浦、奈留両町(現在はともに五島市)内の68年前後の死因別死亡数を長崎県全体と比べた。死因は、子宮がんなどがん5種類と、糖尿病などがん以外の7疾患を調べた。

 それによると、玉之浦では事件発覚の68年と翌69年に心疾患が2倍となった。69年には「あらゆる死因」が1・5倍になり、糖尿病は実数が少ないが、統計上は8倍になった。発生前の65~67年は、県全体を超える傾向にはなかった。こうした結果を踏まえ、鹿嶋氏は「当時の患者認定が皮膚症状の目立った人に偏っていた」と批判した上で「多くの未認定の人たちも被害を受けていたはずだ」と指摘する。

 鹿嶋氏らの研究チームが、さらに中長期的にみていくと、白血病による死亡が奈留では10~34年後に2・4~4・2倍になり、玉之浦では30~34年後に子宮がんが4倍になっていた。

 厚生労働省の全国油症治療研究班も同様の研究を実施し、男性のがんが死因として高いなどの傾向を把握しているが、調査は認定患者に限られていた。

 今後、被害実態を解明するために鹿嶋氏らが注目しているのが、長崎県が事件当時から保有する未認定を含めた被害者の疫学調査データだ。油の使用量や当時の症状など千人超の資料が残っているとみられ、研究チームの岡山大の頼藤貴志准教授(疫学)は「その後の個人の死亡データなどと関連づければ、被害実態の解明をさらに進められる」とみる。ただ、県は「油症班を通じた要請が必要だ」(生活衛生課)として、班外の研究者への情報提供を認めていない。=2015/05/09付 西日本新聞朝刊=

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