精神科医へ救急医の要望

西日本新聞

 民間病院勤務の救急医から話を聞く機会があった。「救急医療は大変でしょうと言われるが、確かに大変」「というのは、うちに来院する救急車の数は年間数千件と多いから」「ただ重症患者は少なくなっている。例えば交通事故。車の性能がよくなり、どんなに横転しても乗っている人は無傷だ」...。救急医療の最前線の様子がうかがえ、興味深く耳を傾けていると、救急医は自身の現場における今の問題点として「過量服薬で搬送される患者」を挙げ、「年間100人程度で全体に占める割合は小さいが、この人たちへの対応に苦慮している」と続けた。

 救急医によると、過量服薬患者の大半は精神科クリニックで処方された睡眠薬など向精神薬を一度に大量に飲んで体調不良になり、救急車で運ばれてくる。それでも身体的な重症度が高くて特段の治療が必要という例はあまりなく、だいたいはすぐに自宅に帰せるという。ただし「自宅に戻して万が一、自殺なんかされてしまうと、こちら救急医の責任が問われる」ため、患者のかかりつけである精神科クリニックの医師につなぎ、その後の対応をお願いしているという。ところが夜間など開院時間外は対応してくれないため、患者をそのまま救急医の病院に入院させざるを得ないケースが相次いでいるという。

 救急医は「せめて精神科医には翌日には診てほしいが、予約がいっぱいと言われ、3日後に診ますなんて言われることもある。その間、患者の入院は続き、貴重な救急医療のベッドがふさがり続ける。医療費と医療資源の無駄だ」と憤る。さらに「ようやく3日後に診たと思ったら、2週間分の向精神薬を処方したりする。そんなことをするから患者が再び過量服薬で救急搬送されることがある」とうんざり気味に語った。

 精神科クリニックはたいていが精神科医1人で切り盛りしているため、24時間対応は総じて難しいのだろう。救急医もそうした現状は理解しているとした上で「それでも自分の患者が、自分が処方した薬で悪くなっているのだから、速やかに診るべきだ」と訴える。これに対し、クリニックを開業する精神科医の一人は「過量服薬防止で薬は慎重に出している。それでも万が一、過量服薬で救急搬送された患者が出たら少なくとも次の朝には診る」と話すが、他の精神科医の皆さんはどうだろうか。ぜひとも意見を寄せてください。=2015/06/12付 西日本新聞朝刊=

PR

医療・健康 アクセスランキング

PR

注目のテーマ