ケアと処置の違いは

西日本新聞

 「"最期までその人らしく"をどう支えるか」という題の講演会が4日、北九州市八幡西区の産業医科大であった。講師は日本在宅ホスピス協会会長で小笠原内科(岐阜市)院長の小笠原文雄さん(67)=写真。在宅医療に力を注ぎ、1人暮らしの患者にも対応することで注目されている医師だ。

 講演は、小笠原医師が関わってきた患者たちの話題が中心。例えば、在宅医療を受ける末期の乳がんの高齢女性については、こんな話だった。

 「女性は状態がよくなって自分でトイレに行けるようになり、尿道留置カテーテル(尿道にカテーテルと呼ばれる管を挿入し、尿を袋などにためておく施術)を抜くことが可能になった。ところが女性は『抜くと私のQOL(生活の質)が下がってしまいます』と拒絶。私(小笠原医師)が『はっ?

 気持ち悪くないの。抜いてあげるよ』と声を掛けても、拒絶の姿勢を崩さない。理由を聞くと女性は『同居する夫は90歳を超えています。私がトイレで倒れたりしたら、夫は疲れてしまう。私は夫の疲れる顔は見たくありません。夫の疲れた顔を見ると私のQOLは下がってしまうのです』と説明した」

 また小笠原医師は、結腸がんで入院していた80代女性患者のこんな「訴え」も紹介した。「看護師さんは私のもとに1回3分の訪問を1日16回してくれるが、看護師さんが話をする相手は専ら医師や別の看護師さんで、私は誰とも心が通わない。私は病院で孤独死しそうです」という内容だ。

 小笠原医師はこうした話を通じて「医療従事者は患者の思いをしっかり把握し、それを尊重して対応することが大切」ということを直接表現はしなくても伝えたかったのに違いない。

 さらに講演では「体を拭いてあげるにしても、する人と、される人の間に温かいものが生まれ、(される人に)生きる力がみなぎってこそ初めてケアといえる。単に体を拭くだけで終わったら処置。ケアと処置では天と地ほど違う」と強調。「その人らしい暮らしの中に希望死、満足死、納得死がある」とも語った。

 日本看護福祉学会学術大会の一環。「処置」でなく「ケア」する人ばかりになれば-。小笠原医師の熱弁には、そんな願いが込められていると感じた。=2015/07/10付 西日本新聞朝刊=

PR

医療・健康 アクセスランキング

PR

注目のテーマ