アタマジラミ 感染広がる 「ノーベル賞の薬」期待 大村氏開発の「イベルメクチン」 米で効果、日本も治験

西日本新聞

 小学校などで頭髪に寄生するアタマジラミの感染が広がっている。繁殖力が強く、感染すると強いかゆみが生じる。最近は駆除剤が効かない薬剤耐性も持つものも現れた。そんな中、今年のノーベル医学生理学賞に決まった大村智・北里大特別栄誉教授(80)が開発した抗寄生虫薬イベルメクチンに注目が集まる。米国では既に治療薬として認められ、国内でも薬の効果を調べる臨床試験が進む。専門家は「日本でも悩む子どもたちを救ってくれるはず」と期待を寄せる。

 「え、また卵が...」。10月上旬、小学2年の娘(8)の頭をチェックした福岡市内の主婦(35)はため息をついた。これまでに3回感染を確認。駆除剤のシャンプーでは退治できず、目の細かい専用くしを使って成虫や卵をすき取っている。クラスでは「頭にいるぞ」と言い合う悪ふざけも起きているという。

 アタマジラミは戦後、有機塩素系殺虫剤DDTの大量頒布で激減。1970年代に再び流行し、駆除薬「スミスリン」が発売されて沈静化したが、90年代以降、学校などを中心に流行を繰り返しているという。

 感染の届け出は必要ないが、国立感染症研究所(東京)の推計では、年間80万人が感染しているとのデータもある。昨年度、東京都の保健所に寄せられた相談は約1600件で3年前の2倍。福岡市内の薬局でも年間を通して相談が多く、注意を呼び掛けるチラシを配る小学校もある。

 これまでスミスリンのシャンプーなどが有効だとされたが、効かないアタマジラミも出ている。同研究所の2006~11年の全国調査では、沖縄県では薬がほとんど効かず、96%で薬剤耐性があると報告された。

 米国ではイベルメクチンの外用薬が効果を発揮しているという。同研究所ハンセン病研究センター(東京)の石井則久センター長(62)は琉球大で治験を実施。米国での薬を用いて沖縄県で感染した子どもたちへの効果を調べる。「薬の安全性は担保されている。日本でも有効性を裏付けたい」と語る。

 ただ、国内で使用できるようになるためには、薬事承認が必要になる。治験のデータを論文にまとめる石井センター長は「大村先生の発見はアフリカに加え、既に日本の皮膚病でも役立っている。早くアタマジラミに悩む子どもたちに届けてあげたい」と話している。

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 ×【ワードBOX】アタマジラミ

 人の頭髪に寄生して吸血する昆虫。成虫は体長2~4ミリほど。卵を髪の根元に植え付け、髪の中を素早く動き回る。病気を媒介することはないが、激しいかゆみが生じ、頭をかき過ぎて炎症などを起こす恐れもある。感染者は幼児や小学校低学年の児童が多い。=2015/10/19付 西日本新聞朝刊=

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