遠隔医療ソフトに期待大

西日本新聞

 「住宅業界は、大工さんによって技術差が歴然とあった。ところが約20年前に『プレカット』という工場であらかじめ木材をカットして現場では組み立てるだけの工法が普及し始め、今はそれが主流となった。大工さんの技術差は出にくくなり、住宅の品質は高レベルで均等になっている。医療・介護業界でも同じようなことを起こしたい」

 福岡県大野城市で筑紫南ケ丘病院や有料老人ホームを運営する医療法人「芙蓉会」。代表の前田俊輔さん(47)に会うとこんな話をしてくれた。前田さんは大学医学部研究員という肩書に加えて、住宅会社社長の顔も持つ。

 今、前田さんが開発に力を入れているのが「安診ネット」という遠隔医療用ソフトだ。「安診ネット」は、既往歴など利用者の健康に関する基礎データをパソコンに事前に入力。その後は毎日、体温▽酸素飽和度▽血圧▽脈圧▽脈数-などのデータを介護スタッフなどが計測し、その都度、やはりパソコンに入力していく。

 入力される利用者のデータはインターネットで遠隔地の医師の手元にあるパソコンにも届き、一体化されたグラフとして表示され、医師が健康状態の悪化を発見しやすくする仕組み。在宅医療で医師が連日、利用者の元に通わなくても、利用者の健康管理ができるというわけだ。

 安診ネットの最大の強みは、蓄積される利用者のデータを活用して、健康状態悪化を自動検知し、パソコン画面上で「警告」を発して注意喚起してくれる点。前田さんは「万が一、医師がグラフから悪化を読み取れなくても、安診ネットの自動検知が補うのです」と語る。

 安診ネットは既に実用化の段階に入っており、芙蓉会の有料老人ホーム入所者に利用してもらっている。80代の入所者について安診ネットが「警告」を出し、それを見た医師が外来診療を受けさせるよう、ホーム側に求め、心筋梗塞の早期発見・治療につながったこともあったという。

 開発は同病院名誉院長の伊達豊医師らも加勢。今秋からは長崎大医学部の本田純久教授(統計学)とも連携している。今月には筑紫南ケ丘病院内に「日本遠隔医療介護センター」も開設した。前田さんは「心不全や肺炎など、高齢者が患いやすい疾患を安診ネットがしっかりと自動検知できるよう、精度を高めたい。そのための研究をセンターを拠点に進めていく」と意気込み、来年中の販売を目指している。

 在宅医療を担う医師の力量に差があっても安診ネットがカバーしてくれるとなれば心強い。開発の行方を注目したい。=2015/11/20付 西日本新聞朝刊=

PR

医療・健康 アクセスランキング

PR

注目のテーマ