ストレス検査「中小」後手 企業に義務化 12月1日から 労働者「不当な扱い」懸念も

西日本新聞

 労働者の心の健康を守るため、1日から従業員50人以上の事業所に義務付けられる「ストレスチェック」。厚生労働省の重点施策の一つだが、企業によっては準備に温度差が見られ、労働者側には「結果を会社に知られ、不当な扱いを受けるのでは」との懸念がある。企業の「かかりつけ医」ともいえる産業医にも制度に伴う負担増が予想され、それぞれ不安を残したままのスタートとなる。

 「会社にストレスを抱えているのを知られるのが怖い」「自分なら会社に知らせずこっそり病院に行く」-。10月下旬に福岡市で開かれたストレスチェックに関する説明会。参加した約70人のほとんどが人事担当者だったものの、不安の声が相次いだ。

 従業員はストレスチェックを事業所側が契約する医師や保健師らから受け、結果は直接届く。本人の承諾なしに、事業者側が知ることはできない。ストレスの度合いが高いと判断されれば、こうした医師に申し出れば面接指導を受けられる。検査を受けなかったり、結果が思わしくなかったりしても、解雇や不当な配置転換は禁じられる。

 だがメンタルヘルスに詳しい社会保険労務士の宮崎由理氏は「本人が医師の面談を希望すれば、結果的に会社に通知しても構わないと同意したと見なされる」という。制度上、労働者が医師面談が必要な高ストレス者に該当するかどうか、事業者側が確認する必要があるためだ。宮崎氏は「不当な扱いを恐れ面談を申し出ないケースも予想される。制度の実効性は見通せない」と指摘する。

 事業者側は来年11月末までに1回目のチェックを行う。ただ先行して導入した大企業がある半面、労務管理を少人数で行わなければならない中小企業は後手になりがちだ。

 厚労省が事前に実施計画の策定なども求めているのに対し、福岡県中小企業団体中央会(福岡市)は「大手と違い中小は景気回復の恩恵が少なく経営も厳しい。どこまで検査に力を入れるか判断は分かれるだろう」とみる。

 ●産業医、訴訟リスク警戒

 ストレスチェックの実施者として同省が主に想定するのは、職場の安全衛生に精通する産業医だ。ただ全国9万人超の日本医師会認定産業医のうち、メンタルヘルスの専門医は約千人にとどまるとされる。一方、対象事業所の労働者は推定2400万人とみられ、同省の外郭団体・福岡産業保健総合支援センターは「精神科の産業医だけでは対応できない」と強調する。

 仮に高ストレスと判断された労働者が面談後に自殺したり、うつ病を発症したりした場合に、労働者のストレス状態を把握していた産業医が訴えられるリスクもあり、ストレスチェックの実施者になることを敬遠する産業医も少なくないという。

 同センターは「うつ病などを未然に防ぐ取り組み。事業所側には、ストレスチェックを行う外部のサービス事業者に委託することなども含めて実施してもらい、従業員の心のケアと、働きやすい職場環境づくりに努めてほしい」としている。

 ●「ブラック度」の指標にも

 医師面談数などから"判定"

 医療コンサル指摘

 「ストレスチェックの結果で、その企業がブラックかどうか分かる可能性がある」。そう指摘するのは、医療コンサルタント会社「産業医大ソリューションズ」(北九州市)の亀田高志医師だ。

 事業所はストレスチェックを終えた後、(1)実施時期(2)対象人数(3)受検人数(4)医師による面接指導の実施人数-の4項目を年1回、労働基準監督署へ報告する義務がある。

 亀田氏は、これらの傾向から「ブラック企業度」=イラスト下参照=が読めると主張する。

 受検する人が多いのに医師面談の実施が少なければ「形式的な実施にとどまっている可能性が高い」と判断できる。受検率が低い一方、医師面談の件数が多ければ「高ストレス者が多いのに表面化していない」と推測できるという。

 「いずれの割合も低ければブラック企業とみなされ、労基署の指導対象となる可能性が高い」と亀田氏。「企業で大切なのは人材。検査結果を真摯(しんし)に受け止めて職場環境を改善するか、ないがしろにするかで将来的に企業格差が出る。経営者がそれに気付くかどうかが、企業の発展の鍵になる」と話す。

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 【ワードBOX】ストレスチェック

 仕事が原因でうつ病などを患い労災認定されるケースが増加傾向にあることから、昨年6月の労働安全衛生法の改正に伴って導入された。メンタル疾患を未然に防ぐため、事業者は従業員に対し、厚労省が使用を推奨する「職業性ストレス簡易調査票」に従い(1)ストレスの要因(2)自覚症状(3)周囲のサポート(4)満足度-に関する57項目について、頻度や程度を4段階で回答してもらう。従業員が50人以上の事業所に義務付けられ、50人未満の場合は努力義務となる。=2015/12/01付 西日本新聞朝刊=

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