ATLがん細胞死滅剤 東大研究グループが開発 発症要因の酵素群特定

西日本新聞 坂本 信博

 ウイルスHTLV1の感染が原因で九州に患者が多い難治性血液がん、成人T細胞白血病(ATL)について、東京大大学院の渡辺俊樹教授(血液腫瘍学)らの研究グループが、発症要因となる血液中の酵素群を特定し、高い確率でがん細胞を殺す化合物(阻害剤)を開発した。がん化していない感染細胞を減らす効果も確認された。5年後の実用化を目指しており、新たな治療薬や発症予防薬への応用が期待される。

 製薬大手の第一三共(東京)などとの共同研究。7日(日本時間8日未明)に米フロリダ州であった米血液学会で発表した。

 グループはウイルス感染が引き金になって「EZH1/2」と呼ばれる酵素群が細胞内で過剰に発生し、正常な遺伝子が発現しなくなった結果、細胞のがん化が進み、ATLが発症するメカニズムを解明した。渡辺教授によると、患者と感染者約30人の細胞を使った実験では、阻害剤を投与後、遺伝子の働きが正常化。がん細胞の多くが死滅するとともに感染細胞も減り、すべての例で有効と確認されたという。

 HTLV1は主に母乳を介して母子感染する。厚生労働省によると、国内感染者は推計100万人超。感染者の約5%が発症し、毎年約千人が死亡している。

 同様の遺伝子の異常はATLだけでなく、他の悪性リンパ腫や白血病でも見られ、渡辺教授は「阻害剤は幅広い種類のがんにも非常に有望。発症予防薬としての利用も視野に新薬承認への治験に取り組みたい」と話した。=2015/12/09付 西日本新聞朝刊=

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